2025年4月より教習所での講習は「AT免許が基本」に
そもそも普通自動車免許に「AT限定免許」が登場したのは1991年のことだった。当時は「MTに乗れないのは不便」とか「AT限定はダサい」などと評され、「AT限定免許」を取る人のほうが少数だった。
しかし、警察庁が発表した令和5年度の運転免許統計では、令和5年度に指定自動車教習所を卒業した104万3956人のうち、78万3937人がAT限定で卒業しており、現在ではAT取得者のほうが断然多い。
その要因は、AT車発祥の地であるアメリカ以上に、日本のAT車普及率が高いことにあるだろう。そんな中で、2024年6月26日に内閣府より「道路交通法施行規則」改正が公布された。
その内容が「2025年4月以降は教習所での講習方法はAT免許が基本となり、MT免許を希望する場合は追加のプログラムを受ける必要があること」というもの。
この法改正により教習所の対応は何が変わるのか? 都内の教習所に聞いた。
「AT免許のほうは何も変わりませんが、MT免許希望の方はAT車で教習と検定を終えた後に限定解除を行なう流れになります。
教習でMT車を使うのはたった4時間なので、MT操作をその短時間でマスターするのはやや無理を感じなくもありません。
また、今回の改正では『教習でMT車を用いてはいけない』とは明記していません。具体的な教習カリキュラムは教習所ごとの対応になるかとは思います」
しかし、教習所によってはMT免許取得希望者の受け入れを当面停止するケースもあるようだ。MT免許取得のケースが多そうな地方の教習所にも話を聞いてみた。宮崎県の「都城ドライビングスクール」の校長は次のように話す。
「うちは変わらずMT免許取得希望者も受け入れますが、教習所によっては一定期間、停止するケースもあると聞いています。
でもここ10年ほどでAT希望者の方が増えましたね。教習車もAT車は30台でMT車は10台ほどですが、私がこの教習所に入職した30年前は逆でしたから。
MT希望者は軽トラによく乗る農家の方とか、会社から『MTにしなさい』と言われた方くらいですね。かつては年間2000人ほどの普通免許卒業生が輩出していましたが、今は1700人から1800人。少子化も関係しているでしょうが、免許離れも進んでいる気がします」