NOを言える会議の重要性

こうした事件は組織内の会議の質を変えると、あっという間に会社の体質は変わっていくでしょう。改革の鍵は、宝塚歌劇団にしてもビッグモーターにしても、会議ひとつにかかっているのです。

これでビッグモーター事件も一件落着したかと思うと、早とちりで、2024年になって、ビッグモーターから損害を受けたはずの損保ジャパンに行政処分が実施されます。

事件の発覚後、損保会社各社は取引を中止していたのですが、損保ジャパンのみがすぐに取引を再開していました。それもそのはず損保ジャパンは、多数の社員をビッグモーターに出向させていたのです。

保険会社から中古車販売会社への出向の先に…
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癒着ですから、いち早く不正に気がついていたはずなのに、知らない顔をしていたのです。ビッグモーターが中古車を販売した際、損害保険会社を客に選ばせます。癒着のため、出向した社員は当然損保ジャパンを勧めます。こうして損保ジャパンは市場のシェアを拡大していました。不正を黙認するのも当然で、これによって顧客の被害はより拡大したのです。

法令順守に反する行為を助長したとして、損保ジャパンの社長は引責辞任します。さらに統治体制の不備を問われて、SOMPOホールディングスの会長も退任に追い込まれました。

このSOMPOホールディングスの会長は、経済同友会の代表幹事も務め、日頃から企業統治が重大だと訴え続けていたと言います。その自らが張り子の虎だったのです。これも、損保ジャパンにおける上から下に繋がる会議が無益だったことの証です。無益ならまだしも、害毒を流していたのです。

誰もが意見を言い合え、「これは変です」「あってはならないことです」とNOを言える会議が開催されておれば、不正はとうの昔に発見され、是正されていたはずです。

社長や会長が辞任したところで、この内部に存在する会議が変わらなければ、不祥事はまた起こるでしょう。

文/帚木蓬生 写真/shutterstock

『ほんとうの会議』(講談社)
帚木蓬生
『ほんとうの会議』(講談社)
2025年3月21日
1,078円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4065390115

討論なし。
批判なし。
結論なし。
「言いっ放し、聞きっ放し」の会議が、
なぜこれほど人生を豊かにするのか?

私たちが囚われている
「不毛な会議」観を
根底からひっくり返す!

人生を変える、新しい形のミーティング

本書の内容
●「ネガティブ・ケイパビリティ」と「オープン・ダイアローグ」が、新しいミーティングの二大要素。
●ネガティブ・ケイパビリティとは、「不確実さや神秘さ、疑いの中に、事実や理を早急に頼ることなく、居続けられる能力」。
●オープン・ダイアローグの核心は、ポリフォニー(多声性)。
●答えのない世界に身を置いて、対話し続けるうちに、思いもかけない世界が見えてくる。
●評価を放棄することで、自由で自然な対話が生まれる。
●ミーティングは、雑多な意見が披露され、種々の声が行き交うカーニバルのようであるべき。
●「答えは質問の不幸である」。すぐに答えを求めることは可能性を閉ざす。
●薬もカウンセリングも効果がなかったギャンブル症者が、自助グループのミーティングで回復。
●ラカン、メルロ=ポンティ、カミュ、バタイユ、ミッテランらフランスの知性を輩出したパリのアパルトマンで、日夜繰り広げられた「終わりなき対話」。

《目次》
第一章 ギャンブル脳を回復させるミーティング
第二章 心の病いを治すオープン・ダイアローグ
第三章 悪を生む会議と人を成長させるミーティング
第四章 答えは質問の不幸である

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