個人店への影響は深刻。“無料コーヒー”を提供している店舗の対応は?

コーヒー豆の高騰は大手メーカーやコンビニ各社にとっても大きな課題となっているが、規模の小さな店舗や個人経営の店にとっては、さらに深刻な影響を及ぼしていると考えられる。

そこで都内のカフェや喫茶店を訪ねたところ、店側からはさまざまな声が聞こえてきた。

「他店の知り合いからは、コーヒー豆の種類によっては価格が上がっていると聞いています。しかし、当店はまだ業者から値上げの通達を受けていないため、提供価格も据え置いています。

仮に仕入れ価格が上がったとしても、すぐに価格へ転嫁することはないと思います。というのも、ウチはもともと少し高めの価格設定にしているため、原材料費が多少上昇しても、まだ持ちこたえられるんですよ」(都内カフェ店主・30代男性)

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

しかし、同店主は「このままコーヒー豆の価格高騰が続けば、コーヒー1杯1000円という時代が来ても不思議ではない」とも指摘する。

一方、下町エリアにある個人経営の喫茶店では、昨今のコーヒー豆の急騰を受け、やむを得ず値上げに踏み切ったという。

「コーヒー豆の価格が上がる前にまとめて仕入れていましたが、昨年12月からコーヒーを50円値上げしました。あと、地味に痛いのはコーヒーゼリー。ウチはお食事を注文されたお客様に、食後のサービスとして小さなコーヒーゼリーを提供していて。これも自家製だから、コーヒー豆が値上がりすると困るんだけど、お客さんには喜んでほしいしねぇ……」(都内の純喫茶店員・50代女性)

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

こうした“サービス”の維持に苦慮しているのは、喫茶店だけではない。「たしかに厳しいですね」と苦笑しながら語るのは、東京・日本橋のベーカリー「室町ボンクール」本店の店主だ。

同店は日本橋と御徒町に2店舗を構え、どちらの店でも「パンを500円以上購入すると、コーヒー1杯を無料提供する」というサービスを時間限定で実施している。店主によると、このサービスは客から非常に好評で、来店客の実に8割ほどが利用しているそうだ。

昨今のコーヒー豆の高騰は、この大人気サービスにも影響を与えているという。

「ウチはずっとこのサービスを続けていて、500円という基準額も、今まで上げたことはありません。昨年末にコーヒー豆の価格が上がったときも、『このままで行こう』と決めました。

ただ、これ以上コーヒー豆の価格が上がるようであれば、考える必要が出てくるかもしれませんね。サービス自体は多くのお客様にご好評いただいているため、廃止は考えていませんが、基準額は上げなきゃいけなくなるかもしれません」(室町ボンクール本店・店主)

「室町ボンクール」では、パンを500円以上購入した人に無料でコーヒーをサービスしている(撮影/集英社オンライン編集部)
「室町ボンクール」では、パンを500円以上購入した人に無料でコーヒーをサービスしている(撮影/集英社オンライン編集部)

豆の品種を変更すればコストを抑えられるのではないかと尋ねると、飲食店ならではの素材へのこだわりがあるようだ。

「サービスとはいえ、豆にはこだわっていて、銀座のバリスタのコーヒー豆を使っています。この品種は、これまで一度も替えたことがないんですよ。昨年末、コーヒー豆の価格がグッと上がったときに替えることも考えましたが、『やはり味を落とすのはよくない』と判断しました」(同前)

「室町ボンクール」では、約8割もの来店客がコーヒーの無料サービスを楽しんでいるという(撮影/集英社オンライン)
「室町ボンクール」では、約8割もの来店客がコーヒーの無料サービスを楽しんでいるという(撮影/集英社オンライン)