司会者も正解を知らなかった⁉ミリオネアの意外な舞台裏

約10年間の歴史の中で生まれた数々の名場面。日本版「クイズ$ミリオネア」が人気長寿番組として国民に幅広く受け入れられたのは、みのさんの強い存在感や司会者としての技量があってこそだった。

「あの時代、まだミリオネアのような海外フォーマット番組を買って、日本で成功した例はありませんでした。なので、当時日本で最高の司会者だったみのさんが起用されたことはごくごく自然な流れでした。

さらに、英国版や米国版が、日本円で1~2億の賞金だったのに比べると、日本版は制約があったため最高額は1000万円。そのため、たとえ賞金額が少なくても番組本来の『挑戦者と司会者の間のサスペンス性』を盛り上げるために、日本の“みのだめ”が他国以上に発展したという背景があります。みのさんは、そのことを誰よりも理解していました」

賞金額が増える後半戦に差し掛かるほど、長くなる“みのだめ”。最終問題では、ためすぎて、おなじみのBGMが終わってしまい、完全に無音の状態でも“みのだめ”が続いていることもあった。

「これを面白がった本家・英国のスタッフが放送中、『日本版では音楽が途切れても、司会者がまだためてるんだぞ!』と紹介したこともあったそうですよ」

と、笑顔で語る伊藤さん。最後に、長年番組をともにしてきたみのさんへの追悼のメッセージをいただいた。

「意外と知られていませんが、番組の世界共通フォーマットとして、司会者は全問題の正解不正解を一切知らされていません。クイズを提示中は司会者も挑戦者と同じモニター表示で、挑戦者が『ファイナルアンサー』と言った瞬間に、司会者のモニターだけに正解か不正解が表示されるシステムでした。

司会者は、どれが正解かもわからないまま、挑戦者の人生がかかったクイズショーを堂々と、しかも大胆に進行する必要があります。これは誰にでもできることではありません。みのさんは、この難しい人間ドラマを10年近くにわたって紡ぎ続けることで、この番組をただのクイズ番組以上のものにしてくれたと思います。長い間、本当にありがとうございました。ファイナルアンサーです」

日本の芸能史に名を残すみのさんの伝説的な司会や名場面の数々は、これからも視聴者の心に残り続けるだろう。

とんねるずのアルバムCD『みのもんたの逆襲』では、みのもんた氏の素晴らしさを称えた曲も収録されている
とんねるずのアルバムCD『みのもんたの逆襲』では、みのもんた氏の素晴らしさを称えた曲も収録されている

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部