ウォーミングアップから盗塁を意識

そうなると、その一瞬、確実にセーフになるスタートができるか、できないかが重要になってきます。

当時の西武ライオンズは、ウォーミングアップでさえ、ただの体慣らしではなく、プレーを意識してやっていました。

高知県春野のキャンプでは、投手と野手に分かれてウォーミングアップをするのですが、メイン球場の隣に、芝のサブグラウンドがあって、そこで30メートルのタイムトライアルから始まるんです。

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今はどちらかというとすべて個人任せで、昔よりも早く出てきて「アーリーワーク」をする選手もいたり、体を動かす時間も増えているようですが、当時のライオンズはノルマというか強制でしたね。「今日は30メートルを10本測るぞ」みたいな感じでした。

今はそういう練習はまずやらないでしょうね。トレーニングコーチとかが非常に工夫をして、どこの筋肉をどのように鍛えるといった意味で、目的を持ってトレーニングメニューを考えています。

当時の西武のメニューは、野球の動き、プレーにつながるという、別の意味で目的を持ったものだったと思います。

ダッシュやフットワークの練習も、スタートは盗塁を意識した形でした。できるだけ試合をイメージして練習をするというのが、貫かれていました。

盗塁に限らず、打撃練習でも、必ずケースを想定した練習が組み込まれていて、バント練習にせよ、進塁打の練習にせよ、ただやるのではなく、いかに今日の試合でサインが出たときをイメージしてやるかに重きが置かれていました。

しかも、こうしたウォーミングアップは、キャンプ期間中だけやって終わりではなく、シーズンが始まっても試合前の練習で継続的に行われていました。

写真/shutterstock

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伊東勤
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