日本にも広がりつつある自国優先主義

近年、ヨーロッパやアメリカを中心に広がる「自国優先主義」や「外国人排斥運動」。そのようなポピュリズムの波は、これまで移民問題などに関心の薄かった日本にも押し寄せていると、白鳥教授は危惧する。

「所属する政党への支持を獲得するために、自国民ではない外国人をヤリ玉にあげることはナショナリズムを掻き立てる象徴的なポピュリズムの在り方です。外国人は投票権がないので、選挙時にはとても有効的な手段となり得ます」

最近では、兵庫県知事選で斎藤元彦知事の対抗馬となった元尼崎市長の稲村和美氏が選挙中、「稲村氏が当選したら外国人の地方参政権をすぐ導入する」といったデマがSNS上で流布され誹謗中傷を浴び、公式サイトで声明を発表する事態にまで発展した。

一方、それに反して、在留外国人の人口は国内で増加の一途をたどっている。2024年6月段階では国内の在留外国人の数が約359万人と過去最高を記録した。

超少子高齢化で深刻な人手不足に陥っている日本にとって、「外国人がいることで日本社会が成り立っている部分もあることを改めて考えるべき」と白鳥教授はいう。

「日本社会にとって、外国人は非常に重要な労働資源になっています。在留外国人は納税の義務も果たして住民としての責任を負っています。

外国人を叩いたり、追い出そうとする思想は結果的に日本の活力にはならない。ダイバーシティーや文化の多様性を認めて、彼らを日本の社会の一部として認識することが大事です」

国内に増える在留外国人の存在は、雇用や住居の確保といった面でもさまざまな問題や検討事項を抱えているのが現状だ。そこにきての今回の高額療養費制度への玉木氏の発言により、また新たな側面にスポットが当たったといえるだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部

アメリカを中心に広がる自国優先主義
アメリカを中心に広がる自国優先主義