2014年当時は軍靴・ヘルメットもなかったウクライナ軍

これに対して、ウクライナに対する援助を積み増してきた米国は並々ならぬ決意を示してきた。その裏には、初歩的な問題があった。2014年にロシア特殊部隊がクリミア半島を奪取し、親露派武装勢力が東部のドネツク、ルハンスク両州を部分的に占拠した際、ウクライナはなすすべもなく、ほとんど抵抗もできなかった。

戦闘経験がなく、数十年間続いた政府の腐敗に加えて、医療器具や軍靴、ヘルメットといった装備さえ持っておらず、ひ弱さが暴露される結果となった。クリミア奪取の際の戦闘で、ウクライナ海軍は約70%の艦船を失った。

このため、米国などは対ウクライナ軍事援助で、レーダー、武装ドローン、暗視ゴーグル、武装ボート、さらに「ジャベリン」対戦車ミサイル、「スティンガー」地対空ミサイルなどが提供された。

さらに、7年以上続いたドンバス地方での親露派武装勢力との戦いで、士気が高まり、戦闘に堪える能力をつけたという。

2021年9月には、NATOの「平和のためのパートナーシップ」演習が行われ、米国が支援し、十数カ国から約6000人の兵士が参加した。

ウクライナ国境を包囲するロシア軍が増強された11月から年末にかけては、約88トンの弾薬、ジャベリン発射台30基、同ミサイル180基が急きょ運び込まれた。さらに150人以上の米軍事顧問団などが常駐してウクライナ軍の訓練に当たった。

米国の対ウクライナ軍事援助額は、米議会調査局(CRS)などによると、2014〜22年6月まで73億ドル(現在の為替レートで約1兆1000億円)、ロシア軍侵攻後の2022〜24会計年度の援助額1742億ドル(同約26兆円)に上った。

こうした状況から、外交誌『フォーリン・ポリシー』電子版はロシア軍のウクライナ侵攻前、「一方的勝利というより五分五分」と予測。「ロシアが早期勝利を得る戦争にはならない」とのアンドリー・ザゴロドニューク元ウクライナ国防相の見方も伝えていた。

ウクライナのゼレンスキー大統領(左)と米国のトランプ大統領(右)
ウクライナのゼレンスキー大統領(左)と米国のトランプ大統領(右)