生成AI時代に求められる試験とは…
「試験監督は写真で本人確認をするのですが、制服と私服、メガネの有無だけで印象が全く違うなと感じたことはけっこうありました。
替え玉受験ではないですが、アメリカでは自身の娘と偽って親が大学に通っていたことが発覚したニュースも過去にありましたね」
今後は日本の大学入試でも海外のように不正の対策側が最新技術を導入し、厳しい警戒体制が敷かれる可能性はあるだろうか?
「現状は性善説に立ち過ぎている面もあると思うので、例えば中国のように通信電波を遮断するという方向も本来は考えるべきかもしれません。
ただ、共通テストのように約50万人が受ける試験で、全国の試験会場の環境やコストも考えると、現実的ではないとも思います。
今後は不正行為に頼る暇がないくらい、どんどん問題を解かせて思考力や処理スピードを問うような試験がさらに増えていくかもしれないですね。また、近年の共通テストは、かつてのセンター試験よりも論述的に考えさせることに主眼を置いた試験になっています」
そもそもトイレの個室でカンニングペーパーを見るような不正をはたらき、数問の暗記問題を正解したところで他の問題を解く時間が足りなければあまり意味はない。
単純な知識量を問うような大学試験は東アジアに比較的多い傾向にあるそうだが、単純なカンニングなどの不正に関しては論述問題で思考力を問う試験で、これまである程度の無効化はできていたという。
「ただ、もはや持ち込み可の論述試験でも不正が通用する時代になったという意味で、生成AIの登場はゲームチェンジャーです。
完璧な模範解答ではなく、いかにも高校生や大学生が書いたような小論文まで生成AIが書いてくれるので。結局、公平性を担保するには通信の遮断くらいしかないのかもしれません」
AIにはない人間の能力を定量的に測るペーパーテストなんてものが果たして存在し得るのか…。正直、想像すらできない。
取材・文/伊藤綾