初の業態だったからこそアイデアが形になるまで2年かかった
パンの基本的なレシピは、ゴディバのエグゼクティブシェフ・ショコラティエ兼パティシエであるヤニック・シュヴォロー氏が発想し、ゴディパンのシェフであるブーランジェ(パン職人)がパンとして体現するという流れになっている。
(ショコラティエでありパティシエである)エグゼクティブシェフが日本ならではの菓子パンや惣菜パンを再解釈し、美味しさやオリジナリティを追求するのに対し、 ゴディパンのシェフは現場目線で焼き方や発酵方法などが現実的かどうかを判断するため、両者のキャッチボールを繰り返しながら1つの商品を開発していくわけだ。
しかし、ゴディバにとっては初のベーカリー業態だったからこそ、「コンセプト作りに非常に時間がかかり、構想から店舗を出すまでに2年かかった」と奥村さんは振り返る。
「我々はベーカリーではないので、『どうやってベーカリーを立ち上げるか』というのは全く未知の世界でした。また、単に普通にパンを作って販売するだけでは差別化が難しく、ブランドとしてどんな付加価値やストーリーを生み出すかを考えるのに多くの時間を費やしました」
ベルギー生まれのゴディバといえば、洗練されたヨーロッパスタイルのおしゃれな店舗が思い浮かぶだろう。しかし、もっと身近で親しみやすいパン屋にするには「現在のゴディバの高級なイメージではなく、もう少しカジュアルで身近に感じてもらえるブランドにしたかった」という。
「お客様に親しみを持ってもらうために、シェフのアイデアや独自性をどう付加価値として組み込んでいけるかを考えました。そうしたなかで、パンはもともとヨーロッパ発祥のものですが、菓子パンや惣菜パンは“日本のソウルフード”として親しまれていることに着目しました。
ヨーロッパのブランドである我々が、『懐かしさ』と『新しさ』を融合させた形で日本で根付いているパンを再解釈していく。このような方向性から『町のパン屋さん meets ゴディバ』というコンセプトが生まれたんです」
日本人なら馴染みのあるチョコレートコロネやクリームパンでも、チョコレートのパリッとした食感やカカオフルーツの果汁などを加えることで、懐かしさの中にも“新しさ”や“意外性”を発見できるものを目指したという。