地元に戻るも再上京した理由は…

専門学校を卒業すると、夢だった服飾関係の会社に就職し、新宿で販売員として働くようになった澤田さん。

地元の九州に戻る選択肢はなかっただろうか―。

「当時は一ミリもなかったです。東京は百貨店やファッションビルも多くてアパレル求人もたくさんあるし、地方に比べて給料も高い。正直、都内は物価も高いし、朝の通勤ラッシュは何年経っても慣れないですけど…、原宿や渋谷みたいな若者ターゲットから、銀座や表参道みたいな高級感溢れる大人ターゲットなどアパレル店員として働き場の選択肢が幅広いのが魅力でした。

それに私が新卒で入った会社は九州方面にも店舗を展開していたので、『本気で地元に帰りたくなったら異動希望だせばいいや』と思っていたのも大きかったです」

その後、20代は東京で順調にキャリアを積んでいた澤田さん。会社の先輩や上司も独身バリキャリが多く、30代を超えても結婚を強く意識したり、焦ったりすることもなかった。

しかし、コロナ禍真っただ中の2021年、会社の方針転換と、澤田さんの父親が病気になったタイミングなどが重なり、福岡の店舗に急遽異動が決まったのだった。

十数年ぶりに九州に戻った澤田さんだったが、

「地元に帰ると、同級生はみんな家庭を持っていて子育てに励んでいました。両親からも『いい歳して…まだ結婚しないのか』と東京では感じることのなかった圧を急に感じてしまい…。

福岡に異動したタイミングでマッチングアプリに登録して婚活に動いてみたんですが、福岡って博多美人と言われるような目鼻立ちがはっきりしていて可愛らしい子が多い上に、女性比率の方が高いんですよ。

だから調子乗っている男が多い…。30代超えて結婚していないことに対して男女双方から差別的な発言をくらうことも多くて、正直、居心地が悪かったです」

結果、コロナ禍が明けた2023年には、父の容態も落ち着いたことなどから東京本店に戻ることを決めた澤田さん。

最後に、東京一極集中に関して個人的な感想を聞いてみたところ、

「地元の田舎を出て自分自身、視野が広がりましたし、若くて柔軟なうちに地元にいないようなたくさんの人達に出会えて、色んな経験を積めたことは財産だったと感じています。

地方は都会と比べて仕事の幅も狭いし、女性がキャリアを築ける仕事も少ないと感じます。

私の地元ではまだ職場含めた地域全体で、女性は男性のサポート役という固定観念が強いです。高校、専門学校、大学と男性と同じように学んできたんだから、同じように社会でバリバリ働きたいと思うことは自然ですし、上昇志向の強い人は特に都会に出たきり帰ってこないような気がしますね」

政府は石破内閣のもと、「地方創生」を柱に掲げるが、若い世代のリアルな声を聞いていると、その道のりは険しそうだ。

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

未だに一部の地方で根強く残る男尊女卑の風土
未だに一部の地方で根強く残る男尊女卑の風土