「経済が好調だと宣伝する要素が強いです」
「20か国近くが春節を自国の祝日に定め、世界人口の約5分の1が春節を祝っています。中国の春節はすでに“世界の春節”です」
中国国営の対外宣伝メディアは春節休みの前から、春節を祝う文化を持つ国や人々が多いことをアピールしている。春節を祝う慣習は、昨年12月には国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間委員会が中国政府の求めを受け、無形文化遺産に登録。
世界各地の華僑や中国文明の影響を受けたアジアの国々に残る文化を、現在の中国政府の影響力と混同させるかのような宣伝は、無形文化遺産登録運動と軌を一にするものだ。
さらに中国政府は、国内経済に勢いがあるように見せる手段にも春節を活用している。
「今年の連休は1月28日から2月4日までの8日間ですが、その前後、1月14日からの40日間は里帰りなどの民族大移動が起きることに対応した交通機関の特別輸送態勢がとられる『春運』期間とされます。今年、中国政府はこの期間に過去最多の延べ約90億人の移動が見込まれると発表していますが、経済が好調だと宣伝する要素が強いです」
そう話す全国紙国際部デスクが実態を解説する。
「人口14億人の中国で、延べ人数で世界の総人口(81億人)よりも多い数が移動する見込みだと強調するのは、里帰りだけでなく観光地に行く人も多く、それだけ消費が旺盛だと示すためです。
中国メディアによれば2020年までは延べ30億人程度で推移していたとされますが、コロナ禍の21、22年は激減。コロナ禍から抜けたと宣言した後の23年には47億人といわれていました。それが、昨年からは一般道を走る自家用車の移動人数まで含めるようになり、昨年は一気に84億人という数字になったのです。
今年はそれも上回る過去最大規模の移動が見込まれると宣伝していますが、実は昨年も春節前の予測は90億人としていたので実際にどうなるかはわかりません」(国際部デスク)