日本が旅行先の人気1位に…なぜ? 

国営の対外宣伝メディアは、「毎年春運の数字が注目される理由は、これが中国経済の底力を表すバロメーターとなるから。帰省は人々の消費意欲を刺激し、地方経済を活性化させます。過去最高の90億という数字は、中国経済にとって幸先のいいスタートといえるでしょう」と、中国の状況をバラ色に喧伝する。

「深刻な不動産不況などで停滞感が続く中国社会では、通り魔的な殺傷事件が続き、共産党指導部は実際には人が大移動する時期の治安悪化を警戒しています。また、患者が増えている呼吸器感染症が人の流れに乗って拡大することも心配されています」(北京駐在特派員)

横浜中華街の春節(ACより)
横浜中華街の春節(ACより)

一方、中産層以上が楽しむ国外旅行のうち、日本を目指す人は増えそうだ。

「中国の国家移民管理局の予測では、連休中の出入国者は1日当たりの平均で延べ185万人になるとしています。日本やタイ、韓国などアジアの近隣国の人気がもともと高いのですが、今年はタイで中国人の誘拐事件が次々に起きていることが報じられ、タイ行きを敬遠する傾向があるともみられています。

韓国も、大統領が弾劾、逮捕されるなどの政情不安が止まらないうえに、職務が停止された尹錫悦大統領の支持者らが『大統領失脚は中国の陰謀だ』などとデマを飛ばしており、魅力が高まる要素がありません。そうなると相対的に日本の人気が高くなり、中国の旅行サイトでは日本が一番人気になっていると報じられています」(社会部記者)

日本政府観光局の統計では、中国からの観光客はコロナ禍前の2019年が最も多く、約959万人だった。コロナ禍から脱した後、東京電力福島第一原発の処理水問題などが響き、客足の戻りが鈍い状態が続き、昨年は約698万人にとどまった。昨年春節があった2月は46万人弱で、コロナ禍前の2019年2月の約72万人には遠く及ばなかった。

2024年2月春節の連休最終日、浙江省の温州南駅で改札を通る乗客(写真/共同通信)
2024年2月春節の連休最終日、浙江省の温州南駅で改札を通る乗客(写真/共同通信)

「しかし今年は対照的に好調で、春節時期の飛行機利用の観光客は昨年比で5割程度伸びるとの見通しも出ています。中国から日本への年間の観光客数は初めて1000万人を突破し、過去最多になるのではないかとの期待の声も出ています」(テレビ局記者)