会見中の不規則発言は絶対に悪?
また、「会見中の不規則発言は絶対に悪なのか?」については、筆者は時と場合によっては必要だと考えている。もちろん被害者・関係者のプライバシー保護には十分配慮すべきだし、会見の円滑な進行にも可能な限り協力すべきではある。
しかし、そうした信義則や建前を政治家や経営者が悪用し、自らの説明責任から易々と逃げてしまう会見がここ10年ほどで蔓延してしまったように感じている。結果、重大な不祥事や問題は曖昧なまま放置され、その不利益は市民がさまざまな形で被っている。
こうした状況に加担しないため、筆者も記者会見で不規則発言をしたことは複数回ある。
例えば、能登半島地震発生から3日後という緊迫したタイミングで開催された、昨年(2024年1月4日)の首相会見。筆者は現地参加して挙手し続けたものの、指名されないまま会見は打ち切り。
しかも、地震後に志賀原発で複数のトラブルが発生して多くの国民が不安を感じていたにもかかわらず、指名された内閣記者会を中心とする全7名の記者から原発に関する質問はゼロ。
そもそも、内閣記者会は「ぶら下がり」という形で地震発生当日(1月1日)〜会見前日(1月3日)まで連日にわたって岸田文雄首相(当時)に質問する機会を独占的に得ていたにもかかわらず、そこでも原発に関する質問はゼロ。
結果、地震発生から丸3日以上が経過しても総理が「原発」について一言もコメントせず、そもそも記者から質問すら出ない異常事態となっていた。
こうした事態を重く見て、筆者は首相会見打ち切りのタイミングで、「志賀原発について質問させて下さい!」と約20秒にわたって大声で猛抗議。それでも岸田総理は一切の反応を示さずに退室してしまった。
「結局、回答は得られなかったので不規則発言をしても無意味では? ただの自己満足のパフォーマンスでは?」という見方も当然あるだろう。
しかし、この抗議は決して無意味ではなかったと筆者は考えている。なぜならば、ハッキリと聞き取れるレベルの大声で問題点を指摘しても、首相は原発について一言も発言できない状況だったことが、この不規則発言によって浮き彫りになったと筆者は考えるからだ。
現に、その後に北陸電力はさらに深刻なトラブルを次々と後出しで発表。表向きは訂正の形をとったものの内容は明らかに訂正の域を超えており、意図的な矮小化・隠蔽が疑われる展開を辿った。