嫌われてもいいけど、嫌われたくない
――昨年放映されたドラマ『離婚しない男・サレ夫と悪嫁の騙し愛』での演技は大きな評判を呼びました。“嫌われてもいい”という覚悟で臨んだということですが。
篠田麻里子(以下同) 嫌われてもいいとは思っていましたが、でもどこか嫌われたくないっていう部分も残っていたんですね。話が来たときは率直にうれしかったけど、これまでとは違う挑戦をしなきゃいけない役柄だったので、やるって決めていながら、いけるかな? どうすればいいんだろう? みたいな不安がありました。
でも、現場で小池(徹平)さんが役になりきったときのプロ根性を見て、自分の中のスイッチが入りました。ちゃんとやらないとつまらないものになるから、恥ずかしいとか、どう思われるだろうとか、気にしないスタンスになりましたね。
――昔のインタビューでは「自分は役者に向いてない」という発言をされていました。
なにかを作ったり自分を表現したりすること自体は得意だと思うのですけど、自分の中にあるものをドラマで晒されるのが恥ずかしかったんですよね。
アイドルって表ではキラキラしているけど、裏の弱い部分はあまり見せずに、みんなの思うアイドル像でいたいんです。それは、お芝居とは対極だと思うので、わりと苦手な分野ではありました。
カメラを向けられるとアイドルは決め顔をしちゃうけど、女優さんは逆に自然体としたままのほうがよかったりするじゃないですか? でも、そういう顔ができない自分がいて、苦手意識があったんでしょうね。
――それが変わったきっかけはなにかあったんですか?
AKB卒業後に映画監督の演技ワークショップに参加して、台本の読み方・捉え方を実践して、そこで恥をかくことやまわりの人たちに俳優の体験談を聞くことが自分の経験になって、徐々に楽しさを知っていきました。
――場数を踏むことで、演技が楽しくなっていったという。
完璧主義なので、正解がわからないと悩んで迷子になる時期があるんです。正解がないと納得できないんですよ。でも演技って正解がないじゃないですか。それでモヤモヤしてたんですけど、やっていくうちに腑に落ちることが増えてきて、いろいろな楽しさが分かるようになってきました。