ソースポットから一気にルーをかけるのはマナー違反?
やはり同じマナー講師から見ても、今回のマナーは適切なものであると考えられるようだ。また、カレーライスのマナーはほかにもあるという。
例えば、レストランなどで、カレーが銀の容器(ソースポット)に入って提供された場合、一度に全部かけてしまわないことが、最後まで美味しく食べるためのポイント。ソースポットには専用の少し大きめのスプーン(レードル)がついているので、適量をライスにかけ、追加しながら食べ進める。そうすることでカレーが冷めにくくなり、カレーの水分をライスが吸うことも防げるのだ。
また、カレーを食べているときは、なるべく大きな音はたてないようにしたいため、スプーンを皿にカンカンとぶつけないように注意する必要もあるそうだ。
理屈としてはもちろんこれらのマナーはわかるが、中には「好きに食べさせてくれ」「カレーだけでこんなにマナーがあると疲れてしまう」とウンザリしてしまう人もいるだろう。
しかしここでわかってほしいのは、マナーとは、「こうしなければならない決まりごと」「正しい形」というわけではないこと。「マナーの根底には『相手への配慮』『思いやり』があります」と金森さんは論じる。
「私はマナーとは、『相手への気遣い、配慮から発生』したものだと考えます。つまり『絶対にこうしなければならない』のではなく、こうする方がいいですが『場や状況、相手に応じて柔軟に対応することが大切』というところまでがセットになっているのです。
特に今回は、食事のマナーです。食事のマナーで大切なことは、同席者と楽しくコミュニケーションを取りながら、美味しくいただくこと。同席者に不快感を与えない食べ方、最後まで美味しくいただく食べ方、そのためにはどのようにして食べればよいのか。そう考えると、おのずと答えは出てくると思います。
同席者が、ソースポットのカレーを一度に全部かけて美味しそうに食べていたら、あなたはどうしますか? 相手に恥をかかせないようにすることや、その場を楽しくスムーズに過ごせるように工夫することも、マナーの重要な役割です。場の雰囲気に応じて、同じように豪快に食べるスタイルが適している場合もあると、私は考えます」