「テレビ局は総理番に女性記者を配置することが多い」

「マスコミ業界はいまだに男社会。女性にとって働きやすい環境であるとはとても言えませんね」

主戦場としている永田町の現状をこう打ち明けるのは、某民放の40代の政治部記者A氏だ。

彼ら政治記者たちは、政治家や官僚の懐に入り込み、新たな政策や政局の動きをいち早く伝えるために日夜、取材活動に奔走している。

政治記者たちは、それぞれ首相官邸の前にある国会記者会館や、霞が関の各省庁に設けられた記者クラブ、長年政権与党の座にある自民党本部内にある「平河クラブ」など、担当に応じて持ち場を与えられるが、A記者が指摘する「テレビ局の体質」が如実に現れるのが、首相官邸に詰める「総理番」といわれる担当だという。

国会議事堂(PhotoACより)
国会議事堂(PhotoACより)
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「『総理番』は文字通り、そのときどきの首相の動向を追いかける担当です。毎日、朝から晩まで官邸入口のロビーで待ち構え、要人や政治家の出入りをチェックする。新聞、テレビに限らず、多くの会社が政治部に入って日の浅い新人を充てます」(A記者)

ほぼ毎日行われている報道各社の囲み取材に首相が応じる官邸ロビーは、視聴者の目にも触れる機会が多いだろう。

20代から30代前半の若い記者が集まり、組織の枠を超えて情報交換をする場ともなっており、現場は、ある種の「サークル」のような雰囲気が醸成されている。

その中でも、「テレビ」と「新聞・通信社」といった具合に、所属媒体によって記者の毛色ははっきりと色分けされるのだという。

首相官邸(PhotoACより)
首相官邸(PhotoACより)

「総理番の女性比率が高いのはテレビのほうでしょう。特に好感度が高そうな華やかな雰囲気の女性記者を配置することが多い。もちろん基本は本人の希望に沿った人事を行なっていますが、それは建前。

上もはっきりと明言することはありませんが、やはり『女性を配置すれば情報が取りやすくなるのでは』という思惑があるのは否定できません」(前出・A記者)

官房長官や自民党幹事長などの要職を担う政治家には、その政治家の一挙手一投足を追いかける番記者が配置されるのが常だが、実際、そうした政治家の中には「女性を前にすると饒舌になる」という風評が立つ者もいる。

「すでに亡くなった、ある与党重鎮もそういう人で、一時、番記者が全員女性になったこともありました」(前出・A記者)というから、歪な人事配置の責任の一端は、メディア側に妙な忖度を強いる政治家側にもあるといえそうだ。