認知症の人は「脳への負担は大きく、疲れやすい」

声もかけられず、急に腕をつかまれたら、驚いて、怒るのもやむを得ないでしょう。それは認知症の人だからではなく、誰でも同じではないでしょうか。

認知症の人が「怒りっぽい」とそしりを受けたり、暴言や暴力と思われたりしていることのなかに、こうした例が多くあると感じています。

さらに、認知症の人は注意障害がある状態で、何とか広範囲に、適切に注意を向け、必要な情報を逃さないように努めているので、脳への負担は大きく、疲れやすいようです。

昨今、認知症の当事者の方たちと会合でご一緒することが増えましたが、当事者の人たちはよく「疲れてしまうと、普段以上に力を発揮できない」と訴えています。

こうした会合の主催者は認知症の症状について理解しているので、お休みする部屋を用意して、当事者の方のスピーチなどが成功するよう、バックアップをしていたりもします。

脳の疲労の増大は、病型に関係なく、すべての認知症で起こります。脳を休めるには、視覚や聴覚からの刺激がごく少なく、そう広くはない部屋で、少しの間、ゆっくりしてもらうのが◎。そのような環境を整えるのは、そう難しいことではありません。

国内の大型空港などには誰もが使いやすい空港施設にする目的で、「カームダウン・クールダウン室」や「カームダウン・クールダウンスペース」といった表示で、休憩できる個室や小スペースが設けられていて、体調を落ち着かせたいときの利用を促しています。

認知症への根本的な誤解。”認知症だから”「被害妄想を抱き」「暴力的で」「注意散漫」になるわけではない_5
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こうしたこと全体が社会にもっと知られて、当たり前の配慮になるといいですね。こうした配慮で助かるのは、認知症の人に限ったことではないのですから。


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早合点認知症
内田直樹
早合点認知症
2025/1/20
1,540円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4763141972

名医たちが認知症の“見立て”を学びにくる認知症専門医が、
人生100年時代に無関心ではいられない認知症の「本当の話」をします。
「恐れる」認知症から、「備える」認知症へと変わる「新しい認知症観」について
現場を知り尽くす専門医がていねいに解説しました。


「認知症になると別人のようになる」「認知症にだけはなりたくない」
そう思っていませんか?
結論から言えば、多くの早合点が認知症の周辺にはあふれています。
認知症はいきなり何もわからなくなるのではなく、進行にはグラデーションがあること。
なかには治療可能な認知症があり、これは早期発見しなければ認知症が進行してしまうこと。

自分や家族が「認知症かもしれない」と思ったとき、まずすべきことは、やみくもに不安に陥って自暴自棄になることでもなければ、脳トレに励むことでもありません。
人生100年時代と言われる現代、誰もが当事者やその家族となりうる認知症について、
「認知症の診断」「治療」「周囲のかかわり方」「社会の取り組み」など、徹底解説します。

認知症の誤解されたイメージが先行すると、認知症を恐れるあまり、早期発見が遅れて引きこもり、かえって認知症が進行してしまうことがあります。
誤ったイメージを改善するために執筆された「新しい認知症観」は、できないことがあったとしても、自分らしく生きている人たちの事例とともに、希望のある話が満載です。

【目次より】
・医師、医療や介護のプロにも起こる「早合点」から身を守れ!
・「加齢によるもの忘れ」と「認知症のもの忘れ」はこう違う
・認知症を進行させてしまう「環境」がある
・「治せる認知症」があることを知っておこう
・「生活習慣病」と認知症はここまで深く関係している
・多くの「脳トレ」に科学的エビデンスなし、でも「楽しくできる」なら◎
・「アルツハイマー病」はなんと40代ですでに「ステージ1」
・軽度認知障害よりもっと手前、「主観的認知機能低下(SCD)」とは?
・「もしかして認知症?」まずはどう動いたらいい?

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