認知症への根本的な誤解。”認知症だから”「被害妄想を抱き」「暴力的で」「注意散漫」になるわけではない
世界でもトップクラスの高齢化率とスピードで日本は「超高齢社会」に入っています。高齢者の暮らしや高齢期の健康やエイジングなどへの関心が高まる中で、「認知症」については中高年だけでなく幅広い世代が、「認知症にだけはなりたくない」と恐れています。ただ、そこには認知症についての正しい知識を持っていないことに起因した偏見や誤解も数多くあります。
「恐れる」認知症から、「備える」認知症へと変わる「新しい認知症観」について現場を知り尽くす専門医が解説した『早合点認知症』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けします。
認知症の人は「脳への負担は大きく、疲れやすい」
声もかけられず、急に腕をつかまれたら、驚いて、怒るのもやむを得ないでしょう。それは認知症の人だからではなく、誰でも同じではないでしょうか。
認知症の人が「怒りっぽい」とそしりを受けたり、暴言や暴力と思われたりしていることのなかに、こうした例が多くあると感じています。
さらに、認知症の人は注意障害がある状態で、何とか広範囲に、適切に注意を向け、必要な情報を逃さないように努めているので、脳への負担は大きく、疲れやすいようです。
昨今、認知症の当事者の方たちと会合でご一緒することが増えましたが、当事者の人たちはよく「疲れてしまうと、普段以上に力を発揮できない」と訴えています。
こうした会合の主催者は認知症の症状について理解しているので、お休みする部屋を用意して、当事者の方のスピーチなどが成功するよう、バックアップをしていたりもします。
脳の疲労の増大は、病型に関係なく、すべての認知症で起こります。脳を休めるには、視覚や聴覚からの刺激がごく少なく、そう広くはない部屋で、少しの間、ゆっくりしてもらうのが◎。そのような環境を整えるのは、そう難しいことではありません。
国内の大型空港などには誰もが使いやすい空港施設にする目的で、「カームダウン・クールダウン室」や「カームダウン・クールダウンスペース」といった表示で、休憩できる個室や小スペースが設けられていて、体調を落ち着かせたいときの利用を促しています。
こうしたこと全体が社会にもっと知られて、当たり前の配慮になるといいですね。こうした配慮で助かるのは、認知症の人に限ったことではないのですから。
写真はすべてイメージです
写真/shutterstock
2025/1/20
1,540円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4763141972
名医たちが認知症の“見立て”を学びにくる認知症専門医が、
人生100年時代に無関心ではいられない認知症の「本当の話」をします。
「恐れる」認知症から、「備える」認知症へと変わる「新しい認知症観」について
現場を知り尽くす専門医がていねいに解説しました。
「認知症になると別人のようになる」「認知症にだけはなりたくない」
そう思っていませんか?
結論から言えば、多くの早合点が認知症の周辺にはあふれています。
認知症はいきなり何もわからなくなるのではなく、進行にはグラデーションがあること。
なかには治療可能な認知症があり、これは早期発見しなければ認知症が進行してしまうこと。
自分や家族が「認知症かもしれない」と思ったとき、まずすべきことは、やみくもに不安に陥って自暴自棄になることでもなければ、脳トレに励むことでもありません。
人生100年時代と言われる現代、誰もが当事者やその家族となりうる認知症について、
「認知症の診断」「治療」「周囲のかかわり方」「社会の取り組み」など、徹底解説します。
認知症の誤解されたイメージが先行すると、認知症を恐れるあまり、早期発見が遅れて引きこもり、かえって認知症が進行してしまうことがあります。
誤ったイメージを改善するために執筆された「新しい認知症観」は、できないことがあったとしても、自分らしく生きている人たちの事例とともに、希望のある話が満載です。
【目次より】
・医師、医療や介護のプロにも起こる「早合点」から身を守れ!
・「加齢によるもの忘れ」と「認知症のもの忘れ」はこう違う
・認知症を進行させてしまう「環境」がある
・「治せる認知症」があることを知っておこう
・「生活習慣病」と認知症はここまで深く関係している
・多くの「脳トレ」に科学的エビデンスなし、でも「楽しくできる」なら◎
・「アルツハイマー病」はなんと40代ですでに「ステージ1」
・軽度認知障害よりもっと手前、「主観的認知機能低下(SCD)」とは?
・「もしかして認知症?」まずはどう動いたらいい?