バレンタインなのに“チョコ離れ”が加速……米のように高価格が続く見込みも
また、先ほどの都内チョコレート専門店Bの店員は、この価格高騰が業界にさらなる打撃を与えていると指摘する。実は近年、バレンタイン商戦そのものが盛り下がりつつあるという。
「『バレンタイン=女性が男性にチョコを渡す』というのは、すでに過去の話です。現在では、性別を問わずチョコ好きが“自分用”に購入するイベントへと変化しています。
しかし、いまはどの商品も値上がりしているため、これまで複数の店舗でバレンタイン限定商品を購入していた客層も、今年はお気に入りの1店舗に絞って買う傾向が強まると思います。
さらに最近では、バレンタインにチョコレートではなく、バッグや財布、アクセサリーといった別のプレゼントを選ぶ人も増えています。
そうした状況で現在の価格高騰が起きているため、『この値段なら、もう少し頑張ってアクセサリーを買う』という人が、今年はもっと増えるかもしれません。
チョコレート店にとって、バレンタインの時期は年間売上の半分近くを稼ぐ、まさに“稼ぎどき”です。この重要な期間に“チョコ離れ”が加速するのは、非常に大きな痛手です」(前出・都内チョコレート専門店Bの店員)
“泣きっ面に蜂”のごとく、洋菓子業界に追い打ちをかけている“カカオショック”。
しかし、この状況は今後も続く見通しであり、将来の展望も決して明るいとは言えないようだ。
「カカオは栽培から収穫までに数年単位の時間がかかるため、当分の間、この高価格帯が続くと思います。昨年の“米騒動”以降、お米の価格が下がらず高値が続いているのと同じような状況になるのではないでしょうか。
当然、このままではチョコレートの消費を控える人が増えるでしょうね。人々の賃金が上昇して余裕が出ない限り、業界の未来はあまり明るくないのかなと……」(前出・都内チョコレート専門店Bの店員)
厚生労働省が1月9日に発表した昨年11月の毎月勤労統計調査によれば、実質賃金は前年同月比で0.3%減少しており、これで4カ月連続のマイナスとなった。
このままでは、庶民に愛されてきたチョコレートも、キャビアやフォアグラのような“手が届かない贅沢品”になってしまうかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/Shutterstock