「衣装代に数十万円かける新成人も」
「○○中の人、並んでくださーい」
県中部・沖縄市の公共施設は12日早朝から慌ただしい雰囲気に包まれていた。
夜も明けきらぬ時間帯から集まったのは、この日の「二十歳の集い」に参加する若者たち。式典に参加するための袴の着付けのために、仲間とともに市内の各所から足を運んだ。
赤や黄、シルバーと色とりどりの生地に、卒業した学校名や名前、思い思いのメッセージを縫い上げたド派手な袴に身を包む。
着付けた袴と同じ赤色に染めあげたリーゼントに、星形やハート型に刈り残したツーブロック。衣装に負けじと奇抜な髪型でも自身の存在感を誇示する。
スタッフとともに着付けの作業に追われていた貸衣装会社「スマイリー」(那覇市)の比嘉基生社長は、「彼らの多くは、出身中学の仲間とともに衣装を作っています。お揃いののぼりや扇子を用意したり、衣装代に数十万円かける子もいますね」と話す。
比嘉社長らが午前3時ごろから始めた着付け作業を全員分終えたのは午前7時半すぎ。衣装を身につけ、早朝から“お祭りモード”に突入した若者らが向かうのは、県内屈指の観光地としても知られる北谷町の撮影スポットだ。
午前10時。北谷町の米軍基地の返還地に建設された「アメリカンビレッジ」という街区に、式典に参加する若者たちが続々と集まってくる。
その名の通り米国の都市を思わせるような、映画館や商店が建ち並ぶ街並みの中で、お揃いの派手な袴を身につけた若者の集団が異彩を放っている。
「式典前にゲームセンターがあるビル前で記念撮影するのが例年のパターン」と明かすのは地元事情通。かつては街区の中心部にあった観覧車前が撮影スポットだったというが、ビルの建て替えで観覧車が撤去され、式典当日の若者の動線も移動したのだという。
「1、2、3、ハイいきまーす」
旗を囲んでポーズを取るグループに向かって、らせん階段の上からカメラを向ける青年に声をかけた。
「あ、僕はハタチではないっす。あの人たちはしーじゃ(先輩)っす。自分は撮影を頼まれて来たって感じです。来年は自分も? そうですね。自分も来年はうっとぅ(後輩)に撮影をお願いするつもりっす」
地元でのつながりを通して、“祭り”の伝統は受け継がれていっているようだ。