「もうオレはいやだ、出てってやる‼」
やがて小百合王妃が第二子――、のちのスグルを懐妊。王妃のお腹のふくらみが目立ち始めた頃、ついにアタルが暴発する。凄惨な家庭内暴力事件が起きたのだ。※29巻
当時を知る元侍従が声を潜める。
「スグル王子が4月生まれですから、その数カ月前だったか、とにかく冬のある日のことです。外ではボタ雪が音もなく降っていました。その日も、不良仲間と遊び回っていることを真弓大王から注意されたアタル王子は『うるせーっ、クソ親父‼』と暴言を吐き、荒れに荒れたんです。
マッスルガム宮殿内に飾られた絵画や壷を、バットで片っ端から叩き割って、城の中は滅茶苦茶になりました。こともあろうに、真弓大王も殴打され、頭にいくつもタンコブを作っておられました」
以下、王室関係者の証言をもとに、修羅場のやりとりを再現する。
「お前は仮にもキン肉星の王子! ワシの後を継いでキン肉星の大王になるべき超人なんじゃぞ!」(真弓大王)
「ケッ!こんなキン肉星の大王家に生まれたばかりに、大王教育に明け暮れる毎日。もうオレはいやだ、出てってやる‼」(アタル)
「アタル! 長男のあなたがいなくなっては何億年も続いたこのキン肉星王家はどうなるのですか? 大王は誰が継ぐのですか⁉」(小百合王妃)
「今度生まれてくる赤ん坊に継がせればいいだろう! 大王教育をほどこして立派な大王にすればいいんだ‼」(アタル)
最後にそう吐き捨てたアタルは、門扉をぶち破って城を飛び出したのである。その時に左上腕部を負傷。アタルが駆け出していった夜道には、真白な雪の上に、点々と赤い血痕だけが残った。
「以来、アタル王子は行方不明となり、城に戻ってくることはありませんでした。出ていった真相は、ごく一部の側近しか知らず、当初は病死扱い、やがてアタル王子の存在もキン肉族の歴史から抹消されたんです。その後に誕生したスグル王子も、兄の存在を知らされず、一人っ子として育てられることになりました」(同前)
そして、出奔から四半世紀が経とうとしていた頃。アタルはキン肉マン ソルジャーのマスクをかぶり、表舞台に姿を現すことになる。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
落下豆男
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