徹底した大王教育を受け続けたアタルは…
当代大王のスグルが誕生する10年前。アタルは真弓大王と小百合王妃の長男として生を享けた。次期大王が約束された待望のプリンス。両親は、アタルが幼い頃から徹底した大王教育を施していく。
王家の世話係だった元侍女が振り返る。
「アタル王子は、次期大王に相応しく、文武に素晴らしい才能を持っておられました。学業面は、小百合王妃が自らアタル王子の勉強机の横に立ってお見守りし、格闘技や体の鍛錬の方は、超人オリンピックで優勝を果たした実績のある真弓大王が、つきっきりでご指導なさっていました」
結果、アタルの頭脳と肉体は、驚異的なスピードで成長を遂げる。10歳を迎える前に何段階も飛び級してキン肉星の名門ハイスクールに進学。正門前で撮影された入学記念の親子スリーショットをみると、その時点ですでにアタルは、170センチある小百合王妃の身長を超えており、成人の超人レスラーの如く筋骨隆々の体格になっているのだ。
一方で、アタルの精神は実年齢に応じた少年のままだったのだろう。
「幼少期から、スキのない大王教育が年間365日、休みなく何年も続きました。アタル王子が城の窓から、同年代の子供たちが外で遊んでいる姿を羨ましそうに眺めておられたことは、一度や二度ではありません。大王教育が全てに優先されており、アタル王子は遊ぶことも禁じられていましたから。キン肉星繁栄のためとはいえ、今思えば、スパルタ教育が過ぎたのかもしれません……」(同前)
ハイスクール入学後、長らく溜め込んできたアタルのストレスは、ついに臨界点を超えてしまう。押さえつけられてきた反動のように、不良仲間とつるむようになり、毎日遊び惚けるようになったのだ。
不良仲間だった一人が紫煙をくゆらせながら取材に応じた。
「アタルは、物心がついた頃から、やれ勉強だ格闘技だと、遊ぶことさえ許されない生活を強いられてきたって、よく愚痴っていたよ。超早熟だから、見た目はオレらと変わらなかったんだけどさ、実際はまだ小学生の年齢だったんだよな。強がってはいたけど、いずれ王にならなきゃいけないプレッシャーに圧し潰されそうになってて、王族ってのは大変なんだなと同情したよ」