ジャグリングサークルの飲み会から生まれた世界でたった1人のRTA走者

――そもそも、どうしてこのRTAを?

最初もお話ししていたとおり、元々2人でやっていたRTAなんです。ですが、お互いの生活環境が変化したこともあり、タッグは事実上解散。私はRTAの世界からフェードアウトしかかっていました。

そんななか、2021年にかつてのジャグリングサークルの仲間と飲む機会があったんです。飲みの席で「相方を探すのが大変」と相談したら、「1人で2つやってみたら?」と言われたんです。

今振り返ってみると、ジャグリングサークルの人だったので、そういう発想に至りやすかったのかなって思います。ジャグリングって、「ぱっと見、無理でしょ!」という技術を努力して身につけるみたいなところがあるので、共通する部分はありますよね。

――それでも、その努力がすごいです

やっぱり、2人でやっていたことを、1人になったからといって諦めたくなかったんです。タイムも、乱数調整も、管理ツールの使用も。そういうのを諦めたら、別に1人でやる意味もないじゃないですか。2人でできていたことを1人でもできるようにする。このRTAに挑戦するにあたって、それだけは譲れませんでした。

あとは、ゆったり練習できる環境だったのも大きいです。RTAの世界って、普通はたくさんの走者が1分1秒を争って切磋琢磨しているのですが、私のやっているポケモン赤緑同時RTAは、世界で私しかやってないみたいなんですよね。

もちろん、このRTAハードル高いよな、というのは自覚しています。でも、一つひとつ丁寧にステップを踏んで練習していけば、誰でもできるようになるとも思っているので、これから挑戦者が増えていってくれたらうれしいです。

取材・文・撮影/笠木渉太