グループチャットでは「〇時に立花孝志さんが来る予定のようです」
在阪記者は選挙の光景を振り返る。
「SNS上の攻撃は斎藤氏も浴びていました。『疑惑があるのになぜ出馬したのか』という非難が多かったですが、疑惑があっても立候補の資格を失うわけではありません。
斎藤氏の演説では選挙戦後半、ほとんどの会場で斎藤氏を非難するプラカードを掲げる“カウンター”が数人現れました。カウンターはヤジも飛ばし、反発した人が手を出して現行犯逮捕される場面もSNSで出回りました。
さらに、選挙戦最終日の11月16日夕に神戸の繁華街で、稲村氏の直後に同じ場所で斎藤氏の演説が行なわれた際は、稲村氏の演説会が終わる前から『帰れ』コールが起こり険悪な空気になりました。ネットでもリアルでも自分の気に入らない候補の支持者の空間に飛び込み、積極的に非難をする人の行動が目につく荒れた選挙でした」
選挙がいっそう異質に見えたのは、斎藤氏を応援するために出馬し「当選は目指さない」と宣言した立花孝志氏が、斎藤氏の街頭演説会の直前や直後に同じ場所で演説を繰り返したり、斎藤氏の疑惑を調査する県議会特別調査委員会(百条委)の関係者の自宅前で演説を行なったりしたためだ。
斎藤氏の疑惑は、今年3月に当時の西播磨県民局長・Aさん(60)がパワハラや物産品のおねだり、公金不正支出疑惑をメディアなどに告発したことに端を発する。
県当局は告発文書の作成などを理由にAさんに懲戒処分をかけたが、県議会は告発に信ぴょう性があるとみて百条委を設置した。こうした中、7月にAさんが百条委での証言の直前に急死。
県当局は懲戒処分の過程でAさんの県公用パソコンに保存されていた私的な情報を入手し、Aさんはこれが出回るのを恐れていたと関係者は話しており、自死とみられている。
「百条委はこの私的情報は告発とは無関係だとし、個人情報であることから公表もしませんでした。しかし立花氏は、斎藤氏の支持者が集まる演説会場で、この私的情報の“中身”を話し、百条委やメディアはこれを隠しながら斎藤知事を陥れた、という趣旨の演説を繰り返しました」(県議筋)
斎藤氏は立花氏との連携を否定するが、二人が近接した時間に同じ場所で演説をすることで斎藤氏の支持者は立花氏の話も聞くことになる。斎藤氏が会場を去っても7、8割の聴衆が去らず立花氏を待つ光景が繰り返された。
60代の女性は「票は斎藤さんに入れるけど、演説は二人とも聞きます」と話した。
さらに「斎藤さんのサポーターが何百人も入っていたXのグループチャットでは『〇時に〇駅北側に立花孝志さんが来る予定のようです』と、立花候補の予定までやり取りされてました」と斎藤氏の支持者は話す。