大谷・山本のドジャース長期契約は間違っている
最近の大リーグの大型複数年契約には驚くほかない。これまで私が繰り返し警告してきたのは、「大リーグの高額複数年契約を真似するな!」ということだった。
150年に及ぶ大リーグの長い歴史は、オーナー側と強力な力をたくわえた選手会の熾烈な闘争の歴史でもあった。選手の年俸高騰は球団経営を苦しめ、結果としてチーム間の戦力格差を招いた。そのきっかけとなったのは1976(昭和51)年に生まれたFA(フリーエージェント)制度だ。
6年間大リーグ登録された選手はFA資格を取得でき、権利を行使すればほかの球団と自由に契約することができる。FAは選手にとっては移籍の自由をゲットできるが、力のある選手は各球団の争奪戦になり、後ろに腕のいい代理人がついて、年俸のつり上げ、高騰を招く結果になった。
この「悪魔のささやき」は1993年に日本でも採用された。その後、2度改正されたが、いまではすべての選手が8年間(大学や社会人出身選手は7年間)プロ野球に在籍すればどの球団とも契約できる。
そして9年経過すれば、海外移籍のFA権を取得することができる。しかも、1998年には日米野球機構の協定でポスティングシステム(入札制度)が創設され、球団が了承すれば9年待たなくても渡米することができるようになった。これがいま、大リーグの日本人選手急増時代を招いた経緯である。
私は、9年間がまんして世界の高みを目指す海外FAは認めるが、その正規のルールがあるのに、横紙破りのようなポスティングシステムには断固反対してきた。日本の選手が世界最高レベルの大リーグで活躍するのはうれしいが、これでは日本の野球の将来を担う人材がいなくなってしまうからだ。