“分裂状態”の自民党
もっとも、街頭演説やネットで見える光景と選挙情勢は別だという見方もある。「自分は自民党員だが斎藤さんを応援したい」という建設会社社長は話す。
「建設業界で何回も選挙をやってきた経験で言えば、動員なんていくらでもできるし、ネットに至っては海外からも手を突っ込めるので、あんなものでは選挙情勢は読めません。
重要なことは、兵庫県は“自民党の県”だということです。業界ごとにある組織票がきちんと動くかどうかが選挙を左右するんです。今回も、自民党がどれだけ組織票を実際の投票に結び付けるか、が結果を決めるでしょう」
その自民党は県議団が稲村氏を推しているものの、斎藤氏の支持グループもあり「分裂状態」と報じられてきた。
「自民党でも県議や国会議員、自治体の首長ら、知事と接点の多い人ほど斎藤氏を嫌っています。斎藤氏が知事として意思疎通をしなかったことが原因でしょう。こうした人たちは追い上げに危機感を持ち、最近本腰を入れ始めました」(自民党関係者)
12日には県内で当選回数11回を誇る重鎮の衆議院議員・渡海紀三朗氏が、斎藤氏は知事時代に「我々に何の説明もなく」重要政策を決めるなど資質が疑われると批判し、稲村氏への支援を呼びかけた。14日には県内29市のうち22の市長が名を連ね、同様の趣旨で稲村氏を支持すると表明、市長7人がそろって記者会見を開いた。
「異例の会見に動いた関係者は、『稲村候補は外国人参政権実現を図っている』などのデマがネットでまき散らかされ、保守層の切り崩しが図られている。市長らの支持者に安心して稲村候補に投票してもらうためにも、会見を開く必要があった」と話した。
自民党が組織を固め直して逃げ切るのか、斎藤氏が再び県庁に戻ってくるのか。大混乱が続く兵庫県の先行きを決めるときが近づいている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班