海獣学者が回答

では、アザラシにとって適した環境とはどんなものなのか。アザラシ保護施設の飼育員はこう話す。

――アザラシのストレスの少ない環境とはどんなものなのか。

「野生に近い環境の方がストレスが無いのは確かですが、飼育下で何がストレスかは環境によります。

単独行動していた子を急に多頭の群れに入れたりしたら、その環境の変化がストレスになることもあります」

――野生に近い、というと海水でなるべく広い環境ということか。

「飼育する場合、海水の方がいいが、すごく広ければ良いとも言い切れないです。

なぜなら、広すぎることで掃除が行き届かないということが起こりうるからです。それよりは狭くても掃除がきちんとされている方が良い場合もあります」

国立科学博物館の海獣学者・田島木綿子氏は物議を醸しているコテージのアザラシについてこう話す。

「彼らは人間のTOY(おもちゃ)ではありません。彼らも生き物で、生きるためにはきちんとした環境、状況が必要であり、哺乳類である彼らはさらに心の拠り所、心の安静もとても重要だと思います」

一方で、ノースサファリサッポロを運営するサクセス観光はニュースメディア「ピンズバニュース」の取材で、

《動物の状況は全員が共有、最善の対策を行なうように心がけています。同じ動物種でも性格に違いがあり、グランピングには人が大好きな子を置くようにしています。昼間はスタッフと遊んだりしています》(ピンズバニュースより引用)

と話している。ノースサファリサッポロ独自の飼育論や動物園を運営するための考え方がそこにはあるのだろう。

そんな中、集英社オンライン取材班は、ノースサファリサッポロが過去5年間で9頭中7頭のゴマフアザラシを死亡させていたことが分かる資料を入手した。

《内部資料入手》5年で7頭のアザラシが死亡、炎上中の“動物と泊まれるコテージ”とは? 責任者の回答は資料と食い違い…_2

2015年から2020年の5年間でのアザラシの死亡頭数について、サクセス観光に確認すると、

「たしか老衰で一頭だけだったかな」

と要領を得ない回答だった。資料と食い違うアザラシの死亡頭数。はたしてこの園に管理能力はあるのだろうか…。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班