“国民を虐める”タイプの壁対策とは?

今回の衆議院選挙で過半数割れとなった自民党は、議席を大きく伸ばした国民民主党に協力をあおぐため、国民民主党と同じく、“103万円の壁”を見直す方向で議論を進めている。

そして実は自民党も、今年9月に小泉進次郎氏が“103万円の壁”を撤廃するべきだと論じていた。

こう聞くと、すんなりと話し合いは進みそうに感じるが、実は“103万円の壁”を見直すと一言で言っても、玉木氏の方法と、進次郎氏の考える方法では正反対の効果を及ぼすという。玉木氏の案は実質的な減税となるが、進次郎氏の案では増税になると指摘するのは、京都大学大学院教授の藤井聡氏だ。

実質的な増税を目指す小泉進次郎氏(本人Xより)
実質的な増税を目指す小泉進次郎氏(本人Xより)

「なぜ、同じ『年収の壁』撤廃論でも増税提案もあれば減税提案もあるのかといえば、そもそも『年収の壁』とは、特定の年収水準以下の労働者は『所得税』の支払いや『保険料』の支払いが『免除』されています。

だけど、その水準を1円でも超える年収の労働者の場合には、そうした『免除』がなく、『所得税』や『保険料』の支払いが必要になる、という仕組みのことです。

この仕組みは、低所得者層(ならびに低所得の扶養されている人々)に対する 『生活支援・生活保護』の視点から導入されているものです。したがって、年収の壁を撤廃するためには、この『税金や保険料の支払い免除』という仕組みをなくすという方法と、より保護対象を拡大する2つの方法が存在することになるのです」(藤井聡氏、以下同)

前者の方法を掲げているのは進次郎氏。この方法は、これまで税金や保険料の支払いを免除されてきた低所得者層が大きな負担を負うことになる。「“国民を虐める”タイプの『増税』型壁対策です」と藤井氏は指摘する。

後者の方法を掲げているのは玉木氏。「免除の対象者を103万円以下から、178万円以下へと拡大する」と、保護対象を拡大すると主張しているので、“国民に優しい”タイプの「減税」型壁対策といえるのだ。

さらに、この案は「年収の壁」以上の所得がある中高所得者層についても、減税効果を持つことになる。まさに、玉木氏が常々主張している「手取りを増やす」に繋がるといえよう。