裏金問題を報じた“赤旗砲”が招いた「与党過半数割れ」
「わが党の支部政党交付金に関する報道について」。投開票を3日後に控えた10月24日、自民党候補者の選対やマスコミ各社にこう題された文書が一斉に出回った。
自民党の「総裁・幹事長室」名義で発出されたこの文書が問題視しているのは、その前日に日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が報じたあるスクープである。
「森山裕幹事長ら自民党執行部が、非公認候補の選挙区支部に政党助成金から2000万円ずつ支出していたことを報じたのです。『裏金問題』が逆風になっている中での報道は自民党候補に深刻なダメージとなりました。
与党過半数割れという歴史的な大敗を招いた一番の要因はこの報道にあったと言えるでしょう」(大手紙政治部記者)
いわば文書はこの「赤旗砲」の「火消し」のためのものだったわけだが、その文面からは自民党執行部の狼狽ぶりが顕著に伝わってくる。
文書は、「一部ネットでは『#偽装非公認』というハッシュタグまで散見され、各候補にもこのことを指摘される可能性があるかと考えます」と警戒し、「記事は、事実を曲解して極めて精緻に誤解を誘導するものであります。しかし、これまで指摘されている『政治とカネ』の問題とはまったく異なり、なんら法律的、倫理的にも後ろ指をさされるものではありません」と強調している
さらに文書には、「党の組織として、しっかり党勢拡大のための活動をしていただきたいという趣旨で、党勢拡大のための活動費として支給したもの」とする森山裕幹事長のコメントや、政党助成金に関する党規約も添えられている。報道によるダメージをなんとか最小限にとどめようとする意図がアリアリだ。
しかし、そうした“工作”も虚しく、選挙の勝敗を左右する重要局面で飛び出した報道による痛手はやはり相当深かったようだ。