大部分のサプリメントは無意味! 日本だけで1兆円の市場規模も医学的なエビデンスはなし
気軽に栄養を摂取できることから多くの人が毎日摂取しているサプリメント。だが最新の研究では、サプリメントのメリットはほとんど立証されなかった。それどころか摂取することで健康を害す恐れもあるという。
UCLA准教授で医師の津川友介の著書『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より一部抜粋・再構成し、正しいサプリメントの知識をお届けする。
正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール #4
それでもサプリメントを摂るべき人
一方、サプリメントを摂る必要がある人もいる。それは次のような人である。
(1)妊娠可能年齢の女性で、妊娠する計画がある場合。
(2)骨粗鬆症があり、食事によって十分量のビタミンDが摂取できない場合。
(3)血液検査によってビタミンB12欠乏症、鉄欠乏性貧血、亜鉛不足による味覚障害などが指摘されており、医師からサプリメントの摂取が指示されている場合。
(4)消化器の病気を有していたり、消化器の手術を受けており、それに伴う栄養の吸収障害がある場合。
例えば、胃を切除すると鉄分やビタミンB12の吸収障害による貧血、カルシウム吸収障害による骨粗鬆症がしばしば起こる。その場合はサプリメントによる補充が推奨される。
特に妊娠初期に葉酸の摂取量が少ないと、二分脊椎をはじめとする胎児の神経管閉鎖障害と呼ばれる先天異常のリスクが上がることが知られている。
妊娠中には通常よりも多い葉酸が必要で、食事からの摂取だけでは不足する可能性があるため、葉酸のサプリメントによる補充が推奨されている。
妊娠が成立する1か月前から摂取することが有効だとされており、妊娠に気づいたころには遅いため、妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠する可能性がある女性には葉酸のサプリメントは推奨される。
また、妊娠24週から1日2.4gの魚油のサプリメント(EPAとDHA)を摂ることで、早産のリスクが減少[*8]し、生まれた子どもが3歳までに気管支喘息や気管支の感染症にかかるリスクが下がる[*9]という実験の結果もある。
魚油のサプリメントは副作用がほとんどないとされているので、妊娠中の女性は摂取を検討しても良いだろう。
例えば病院で鉄欠乏性貧血が指摘されており、鉄分のサプリメントを摂取するように指導されている人はその摂取は続けた方が良いだろう。
味覚障害があり、病院で亜鉛のサプリメントを試してみるように言われ、それで症状が改善している人もいるだろう。
このように、病院で医師によってサプリメントを摂取することが推奨されている人は、食事だけでは何らかの栄養素が不足しているということであるので、きちんと飲み続けてほしい。
まとめると、サプリメントを「なんとなく身体に良さそうだから」と摂取することはおすすめできない。健康上のメリットがなくてお金の無駄遣いなだけでなく、飲み合わせなどで健康被害を生じてしまう人たちもいるからである。
その一方で、妊娠前の女性や病院で何らかの栄養不足を指摘された人のように、サプリメントが健康上有益であると考えられる人たちもいる。
自分がどのパターンに当てはまるかよく考えて頂き、賢くサプリメントを使いこなすことをおすすめしたい。
写真/shutterstock
正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール
津川 友介
2024年10月18日発売
682円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4-08-744707-1
為末大さん(元陸上選手)
健康の〈型〉がここにある。
健康知識を手に入れることは、最も効率が良い投資なのだ。
宋美玄さん(産婦人科医)
この一冊には、健康に関するあらゆることが高いエビデンスレベルのもと網羅されています。
高価なサプリやダイエット法に「なんとなく良さそうだから」と飛びつく前に読んでほしい。
人生を楽しみながら健康になれる〈最短ルート〉を示してくれる本。
市原真(病理医ヤンデル)さん(医師)
「行動選択の拠り所」になる医学に気軽にアクセスできる。
私はもう一冊買って親に送る。
少し意識を変えるだけで、重い病気になるリスクを劇的に下げられる――!
最新研究から明らかになった、健康に生きるための黄金のルール。
医師で世界的な研究者である著者が、質の高い論文175本を選び抜き、
がんや脳卒中、糖尿病、アレルギーになるリスクを劇的に下げるメソッドをまとめました。
「7時間以上寝る」心筋梗塞のリスク20%減、
「白米を1日1杯以下にする」糖尿病のリスク24%減など、
具体的な方法を食事・睡眠・運動・入浴といったカテゴリー別に網羅。
確かな科学的根拠(エビデンス)を1冊の本にぎゅっとまとめました。
病気になってしまうその前に知っておきたい、今日から実行できる「最強」の健康習慣。
【本書で明かされる驚きの事実】
●牛肉や豚肉はガンのリスクを上げる
●1日1杯のお酒は脳卒中のリスクを下げる
●太る野菜・果物もある
●糖質制限ダイエットは死亡率を高める上、リバウンドしやすい
●サプリメントはほとんど気休め
●睡眠時間を1.5時間単位にすると良いというのは都市伝説
●サウナは心臓疾患による突然死のリスクを下げる
●ストレスとがんは関係ない
●加熱式タバコにも多くの有害物質が含まれている
●受動喫煙で毎年赤ちゃんも含めた1万5000人が亡くなっている
●子どものアトピーは保湿によって予防できる
●花粉症を根治できる治療法がある
●かぜに抗生物質は無意味
●がんを予防するワクチンがある
etc.…
人生100年時代、病気にならずに健康に生きたい人必読の一冊。
(装画・ヤギワタル)