「かわいい」と言われたら芸人として終わり
これまでテレビでも前夫との死別や、娘との別居について語ってきた島田珠代さん。それらをさらに仔細に記したエッセイ『悲しみは笑い飛ばせ! 島田珠代の幸福論」の中でも、ハイテンション芸を披露する姿からはかけ離れた、“容姿イジリ”に対する葛藤が赤裸々に綴られていたのが衝撃だった。
――そもそもどのような経緯で芸人になられたのでしょう?
高校2年生のとき、バラエティ番組『4時ですよーだ』の素人参加コーナーに出演、それを見ていた吉本興業の社員さんに声をかけられたことをきっかけに、事務所に所属しました。
高校3年生のころには「心斎橋筋2丁目劇場」に立たせてもらっていたのですが、当時の劇場のお客さまのほとんどは若い女の子で、一緒に舞台に立っていたダウンタウンさん、今田耕司さん、東野幸治さんのファンたちはとにかく熱狂的だったんです。
そんなある日トイレで、ある女性芸人が20人くらいのファンの女の子に囲まれながら、「あんた今田さんとしゃべりたいから、この世界入ったんちゃうん」と詰め寄られているのを目撃したことがありまして…。
そのときに女性から嫌われたら生きていけない、女性でも男性でもない“島田珠代”にならないと笑ってもらえないと感じたのを覚えています。トラウマがあるのか、今でも「かわいくなったね」などと褒められたら、芸人として終わりだと感じてしまいます。
――その後新喜劇に出演するようになり、壁にぶつけられたり、容姿を笑いに変える「三枚目女優」の道に進んでいったのですね。
新喜劇での立ち回りに悩んでいたときに、先輩から「三の線を狙っているなら、あえてかわいこぶった演技をしたほうがいい」と言われて、アドバイスを信じて演じたら、かつてない笑いが起こったんです。
そのときに舞台上で言われた「気持ち悪いわぁ~!!」という言葉は最高に気持ちいいものでした。
「容姿をイジられて辛くないですか?」と聞かれることもありますが、テレビや舞台上で容姿をいじってもらえるのは、本当にありがたいんです。私は三枚目の芸でご飯が食べられているわけですから。