「道義的責任が何か、私は分からない」 

今回の問題は3月12日に知事や側近らの違法行為疑惑を羅列した告発文書を当時の西播磨県民局長、Aさん(60)が県議やメディアに送ったことに端を発する。

組織の問題を指摘した告発者を特定したり、告発者に不利益を与えたりすることは公益通報者保護法で禁じられているが、斎藤知事は発信者を調べろと県幹部に指示し、特定されたAさんは懲戒処分を受けた後、7月に自死している。

「告発内容やAさんへの報復人事の実態を解明するため県議会に調査特別委員会(百条委)が設置されましたが、ここで9月6日に証人尋問を受けた斎藤知事は、Aさんの死に道義的責任を感じないのかと聞かれて『道義的責任が何か、私は分からない』と答えました。

この言葉が決定打となり、県議会は斎藤氏には『(知事の)資質を欠いていると言わざるを得ない』とする不信任決議を全会一致で行なったのです」(県関係者)

斎藤知事はこの決議への評価を避けてきたが、26日の会見で遂にがまんができなくなった。

「百条委とかで文書問題を調査、事実解明していくことは大事と思いますが、果たしてこれが知事が職を辞すべきことなのか、というものが(自分の気持ちの)根底にあるというのが率直なところです」(斎藤知事)

不信任決議は告発内容そのものではなく、県が告発者であるAさんを法に基づいて保護せず、命を守れなかったことへの斎藤知事の態度を問題にしている。

だが知事は、真偽の確認作業も終わっていない告発を理由に辞職を迫られたとの考えを示唆し、不信任は納得できないという考えを明確にした。

Aさん処分に至る決裁文書(撮影/集英社オンライン)
Aさん処分に至る決裁文書(撮影/集英社オンライン)

さらに斎藤知事は今の状況に「大きな責任は感じている」と言ったが、何に対しての責任かは不明瞭だ。

「道義的責任は辞職につながると思っている。辞職は、私は今回しなかった」とも言い切ったため、道義的責任を認めていないことは確かだ。

こうした態度に、「再出馬する資格が自分にあるのかと心の中で葛藤はなかったのか」との厳しい質問も飛んだ。

これに斎藤知事は「厳しい選挙戦になるという中で思い悩んだが、自分の中では(もう一期)やらしていただきたいということを決めた」と返答。

出馬するかどうか悩みはしたが、それは選挙が有利か不利かの分析に迷っただけだったことをうかがわせた。

そして「私としては、これからも県政を担わしてもらうことができると思っている」とも述べ、知事としての能力をアピールした。