異次元の少子化対策
あまりに人口減少が急激なので、岸田政権は批判に応えて、2023年12月に通称「異次元の少子化対策」なる「こども未来戦略」を打ち出した。「こども未来戦略」にはたくさんの政策項目が並んでいるが、目玉としているのは次に挙げることだと考えられる。だが、後で述べるように、いまや女性の社会的地位の飛躍的な向上を図らないかぎり、少子化は克服できなくなっている政策を中心に、問題点を検討しておこう。
第1に目玉とされたのは、所得制限を撤廃して、児童手当の支給期間を高校生年代まで延長する政策である。すべてのこども・子育て世帯について、0歳から3歳未満は月額1万5000円、3歳から高校生までは月額1万円を給付し、つぎに第3子以降は月額3万円を給付するという内容である。
まず問題なのは、これは旧民主党政権時代に行われた所得制限抜きの子ども手当と同じだということである。それは単なる政策のパクリではすまない。自民党は旧民主党による所得制限抜きの子ども手当を「ばらまき」だと批判してきたが、その反省がまったくない。実際、自公両党の激しい攻撃の下で、2012年4月に所得制限付きの元の児童手当に戻したが、その後、少子化が一層進んでしまった。
さらに問題なのは、所得制限抜きの児童手当の拡充のための財源調達方法にある。児童手当の適用を高校生まで広げたのはよいとして、高校生に対しては児童手当拡充の見合いとして高校生に対する扶養控除を縮小する。その結果、児童手当額の増加額より控除撤廃による損失額の方が上回る事例が発生している。おまけに第3子までの給付額を1万5000円から3万円に引き上げるのに必要な予算額約4兆円の財源として、健康保険料に1人当たり500円を上乗せして、残りはつなぎ国債としているのである。