「人事課のほうから聞いた」→「3月25日に片山副知事から聞いていた」
先述の通り、Aさんは7項目の疑惑を告発。このうちタカリ問題はコーヒーメーカー問題を含め4つ、パワハラでも4例を示しながら「枚挙にいとまがない」と書いている。合計で13の具体的な問題行動が記されている中で、ネタ元と疑われメール記録などを調べられたのが産業労働部の4人だけとは考えにくい。
例えばパワハラ問題でも、斎藤知事が会議の会場建物のそばまで公用車で近づけなかったことに怒って出迎えの県職員を怒鳴り散らした事件をAさんが告発文書に書いたところ、片山副知事はAさんを県民局長職から解任した当日の3月27日に、Aさんにこの話を伝えた野北浩三・東播磨県民局長を「あまりしゃべりすぎるなよ」と恫喝している(♯12)。
ほかの疑惑でも関係する職員への徹底した調査や口封じが行われた疑いは強い。
原田部長の証人尋問で浮かび上がった県幹部のおぞましい生態はこれだけではない。原田部長は、井ノ本氏が持ち歩いていたAさんの個人情報を3月下旬には「(自分も)聞いた」と証言した。
人事担当職員以外が他部署の職員の個人情報を保有することは個人情報保護法に違反する疑いが強く、原田証言は違法行為が広く蔓延していたこと思わせる。
「誰から聞いたのか」と問われた原田部長は、はじめ「覚えていない。人事課のほうから」ととぼけたが、追及されると記憶をたどる仕草をした後、「たぶん上の方の人間、人事課長、副課長とかがいる場で(聞いた)」と証言したのだ。
ところが原田部長の直後に非公開で証人に立った別の県幹部は「人事課はそのような情報を原田には伝えていない」と主張。
人事課も原田発言に抗議し、結局原田部長は6日午前に証人として再出頭し、「3月25日に片山副知事から聞いていた」と発言を訂正しながら、この情報が他の場でも話題になっていたとも話した。
原田部長が説明を変えた真意は不明だ。この情報を触れ回っていた井ノ本氏は9月5日の百条委に証人として証言を求められていたが、「殺害予告を受けている」などと主張して出席を拒んだ。
Aさんの人権がぞんざいにに扱われた実態の解明を目指す百条委の前に、さまざまな壁が立ちはだかる。百条委は真相にたどり着けるのだろうか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班