告発つぶしのため、無関係の職員に同意のない調査が行われていた

Aさんはその後、4月4日に県が設けた公益通報窓口で手続きを取るが、県当局はAさんの行為が公益通報に該当するか否かを判断する前の5月6日に、減給3か月の懲戒処分を出す。

「さらにAさんのパソコンから抜き出した私的なデータを、井ノ本氏は県議に見せて回り、斎藤知事を選挙で推した維新の県議は、これを文書問題調査特別委員会(百条委)で公開すべきと主張しました」(社会部記者)

「公益通報者保護法では誰が告発したかを詮索することも禁じられています。しかし知事らは最初から“犯人探し”をしてAさんを特定し処分を急ぎました。疑惑をかけられた当人やその支援勢力が、告発者を死に追いやったんです」(フリーランス記者)

それだけではない。9月5日、この問題を解明する百条委に証人として呼ばれた原田部長への質疑で、告発つぶしのため、無関係の県職員に本人の同意のない調査が行われていたことが分かった。

証人尋問を終えた原田産業労働部長(撮影/集英社オンライン)
証人尋問を終えた原田産業労働部長(撮影/集英社オンライン)

原田部長は百条委で、3月21日に知事が側近4人を集めた時に「知事からは(告発文書の)出所とか事実確認をしようとは言われた」と話した。それに対し、奥谷謙一委員長から「事実確認などしていないではないか」と突っ込まれると「私は直接の担当じゃないんで…」としどろもどろに。

さらに「文書の作成者を探そうとなったのではないか。知事からの指示なんですね」と詰められ、「トータルで言えばそう」と認めた。この日のうちにAさんのメール解析が命じられたのは先述の通りだが、対象はそれだけではなかった。

「原田部長の部下、産業労働部の4人の職員の1年分のメールを調べろと指示が出ている。中でも、(Aさんへの調査と)同じ(3月)22日に調査された人が2人いる」

独自に県職員らから情報を収集してきた竹内英明県議に百条委でそう迫られた原田部長は、これも事実だと認めたのだ。