デマに悩まされたタワマン住人たち

マンションの住民は助け合って危機を乗り越えたというが、取材をしているうちに当時の風評被害を思い出して怒りをあらわにする人も。

「35階に住んでいるから階段の上り下りが1番大変でした。配られた簡易トイレを使うのに抵抗があったから、トイレのたびに1階まで階段で降りました。

でもそれがきっかけで住民同士の絆は深まりました。みんなで協力し合ったから乗り越えることができたんです。買い物で重い荷物を持って階段を上っていたら、若いお兄さんが荷物を運ぶのを手伝ってくれたりして。

二子玉川エリアも氾濫で大きな被害を受けた(撮影/集英社オンライン)
二子玉川エリアも氾濫で大きな被害を受けた(撮影/集英社オンライン)

ニオイ? そんなの気にならないわよ! ニオイがあったなんてマスコミのデマよ!
本当におバカねぇ! 当時はマスコミが連日大量に来て『汚水タワマン』なんてデマを流して騒ぎ立てるからすごく迷惑しました。ろくでもない人たちがたくさん来て写真をいっぱい撮られたわ」(60代の主婦)

70代の主婦も居住区が沈んだかのようなデマに悩まされたという。

「水没ってのは地下のことだから、居住階は普通に暮らしてるのよ。電気が使えないくらいで。簡易トイレとかも配られたし。あのときはいろいろとデマも流れてね。ソファーがプカプカ浮いたとかそんなのは本当に嘘で、そういう風評被害に悩まされたの。

当時不便だったのは停電でエレベーターが使えなくなったことくらい。お風呂も隣のスポーツクラブやホテルが使わせてくれてけっこう地域で温かく協力し合ったの。マンションの組合が仲よくやってるからみんなで助け合って。あれ以来、災害対策もしっかりしたし、悪いことばかりじゃなかったなぁって」

2021年に市が購入した止水板
2021年に市が購入した止水板

 今回、その台風19号を上回る勢力の台風が近づいている。同じことが起きる恐れはないのか。当該のタワマンは電気設備を上階に移したうえ、止水板を準備するなどして、マンション機能がマヒするリスクを低減させる措置をとったという。