スタープレイヤーたちが中学、高校生のやる基礎練習を黙々と

練習内容は、ある意味で退屈。基礎の徹底と国際ルールへの対応にほぼすべての時間が割かれていた。

片足を軸足としてフロアに固定、もう一方の足を動かすピボットの練習。状況に応じパスを左右どちらの手で出すかの反復。ディフェンスにおけるポジショニングの確認。国際ルールとNBAルールでトラベリングの判定は微妙に変わるため、笛を吹かれないためのドリブルの初動の確認など。

中学生や高校生がやっていてもおかしくない練習が、幾度となく繰り返された。そんな派手さとは無縁の練習を年収何十億のスタープレイヤーたちが黙々と取り組んでいる。

さらに驚いたのは、練習中に最も声を張り上げているのが、2008年の北京、2012年のロンドンで金メダル獲得に貢献し、3大会ぶりにアメリカ代表に戻ってきた、今年40歳になるレブロン・ジェームズだったことだ。

写真左に写るのが、レブロン・ジェームズ。写真からでも圧倒的存在感がわかる。写真/松井啓十郎
写真左に写るのが、レブロン・ジェームズ。写真からでも圧倒的存在感がわかる。写真/松井啓十郎

その表情や額に刻まれたシワは確かに年齢を感じさせる。しかし、その鍛え抜かれた肉体はアメリカ代表のどの選手よりも分厚く、若々しかった。

完璧に体を準備して合宿に参加する姿勢、練習でも一切手を抜かない桁違いのストイックさに驚き、思わず日本代表の八村塁にメールをした。レブロンは普段から、これほどストイックなのかと。ロサンゼルス・レイカーズでレブロンとチームメイトであり師弟関係でもある八村からの返信は素早かった。

「レブロン、ヤバイです」

レブロンのキャプテンシーに、より驚かされたのが7月10日に行われたカナダ代表との親善試合だった。

親善試合会場。写真/松井啓十郎
親善試合会場。写真/松井啓十郎

カナダ代表もスターターはNBAのスター選手が並ぶ。

初の親善試合にアメリカ代表はバタバタした一面も時折見せたものの、86—72で勝利。

試合後、アメリカ代表の選手が仲のいいカナダ代表選手と和気あいあいと握手を交わしていた時だった。カーが用意してくれたゴール裏の最前列の席からはっきり見えた。

レブロンの「握手は後だ」と言わんばかりの険しい表情で、チームメイトを大きなジェスチャーで集める姿が。ハドルを組むとレブロンは言った。

「勝つには勝った。だが過去最悪の内容だった。ここから這い上がろう」