「トー横キッズ」よりも後回しの宗教2世

これについて、分かりやすい例えで引き合いに出したのが、昨今問題になっている「トー横キッズ」だ。

いわゆるトー横キッズをめぐっては、都が臨時相談窓口を設置したり、警視庁が一斉補導に踏み切ったりと、行政の動きも目立っている。団作氏の私見では、これは宗教2世と違い、トー横キッズが目につきやすいからではないかという。

夏休みのトー横 写真/集英社オンライン編集部 
夏休みのトー横 写真/集英社オンライン編集部 

「トー横キッズの周りに変な大人が集まったり、子どもが犯罪に巻き込まれたり、治安の問題があるからすぐ動くんだと思いました。宗教2世含め、虐待経験者は精神を病んで家の中にずっといるんですよね。だから社会に出てこないんですよ」(団作氏)

返す返すも、宗教2世の“見えにくさ”が、とても大きなハードルになっていることが分かるだろう。

銃撃事件後、2022年12月に不当寄付勧誘防止法、昨年12月に旧統一教会の被害者救済特例法がそれぞれ成立したが、団作氏はこれについて、「あくまで過度な献金を防止したり救済したりする法律であって、宗教2世問題と直接的な関係は薄い」と指摘する。あれだけ議論になった宗教問題だが、2年が経っても2世問題は“後回し”になっているようだ。

こうした現状を進展させるためにも、下火になった議論を改めて呼び起こすことが求められる。それは、団作氏の言葉からも明らかだろう。

「例えるなら(その場しのぎに)絆創膏を貼っているだけじゃないですか? 困難に陥っている子どもや若者について、『どうしていこう』という議論もないまま絆創膏を貼るんじゃなくて、もっと大きな議論を国にはしてもらいたいですね」(団作氏)

事件をめぐっては7月3日、山上被告も出席のもと、奈良地裁で第4回公判前整理手続きが開かれた。日本中の注目が予想される裁判だが、改めて宗教問題の議論が深まることはあるのか。

取材・文/久保慎