下半身を見る必要性は? 別の小児科医に聞いた

この担当者によると、町教育委員会は事前に渡される「問診票」を確認するだけで、健康診断の細かい内容については、学校の担当者に任せていたという。

今回の件に関しても「そのあたりの打ち合わせがうまくできていなかったのではないか」と話すが、そもそもなぜ男性医師は児童の下腹部を視診したのか。

「医師に言わせると、『児童の成長段階の外性器や陰毛の確認をした』とのことで、このくらいの年代になると思春期早発症という病気を発症するリスクもあるため、体の成長に異常がないか見るために視診したと話していました。

あくまで医療行為だと説明していて、当日も(児童の)下腹部に関しては1、2秒ほどしか確認しなかったそうで、実際に児童の中には『もう一回病院に行って検査したほうがいい』と診断された子もいたとのことです」(同)

この70代の医師は、昨年度から同校の健康診断を担当。今年で2回目の健診だったわけだが、去年から「下半身を見られた」といった情報はあったという。

「もともと一昨年までは整形外科の先生にお願いしていて、去年から(70代の医師に)お願いしていたわけですが、去年も児童から『(医師に)ちょっと見られた』などの声はあがっていたそうです。

とはいえベテランの小児科医ということもあり、思春期早発症など児童の発育には詳しい先生ですし、とくに大きな苦情などもなかったものですから……」

※写真はイメージです
※写真はイメージです

では学校健診で児童の下半身を見たり、触ったりすることはあるのだろうか? 愛知医科大学の小児科医、宮本亮佑医師はこう語る。

「学校健診において、陰部の診察をするのは一般的ではありません。健診では、身長や体重がちゃんと成長曲線に沿っているか、太りすぎてないか痩せすぎてないかなどを確認します。

あとは側弯症といって、背骨がちょっと曲がってしまうことが小学生には見られたりするので、児童にお辞儀をさせて背中の左右の高さに差がないかをチェックします」

児童の下半身を“目視”した理由について、70代の男性医師は「思春期早発症の確認のため」と説明していたが、宮本医師は「その言い分に関しては正直苦しいと思います」と話す。

「思春期早発症の初期症状として、男の子の場合は睾丸が大きくなり、女の子の場合は胸が膨らんできます。いきなり陰毛が生えるというパターンは多くありません。

ご自宅で保護者がお風呂上がりに児童の体の変化に気づくというケースがほとんどなので、学校健診で思春期早発症と疑われて病院に来ることは少ないです。

そのため、児童の陰毛の生え際を確認するのは一般的ではありません。そもそも思春期早発症は、男の子だと9歳以下、女の子だと8歳以下でないと診断されることはありませんから。

9歳以上だと、上記のように体の変化があったとしても、思春期早発症には該当しないんです。今回の件に関しても、報道だと高学年の児童も『(陰部を)見られた』と訴えているので、その言い分は通用しないのでは、と思います」