“性的サービスのないイメクラ”のようなサービス

応募者がラブドールになりたい事情は三者三様だ。
「かわいく撮影されたい」「ふだんはできないセクシーな格好をしたい」といったオーソドックスな理由から、「ものとして放置されたい」「緊縛されたい」「蹴ってほしい」というフェチ的願望も絡む。

二宮繭さん。撮影当時は妊娠出産を控えており、フラットな姿を残しておきたいと予約したという
二宮繭さん。撮影当時は妊娠出産を控えており、フラットな姿を残しておきたいと予約したという

さらに応募者の5割近くは、性自認が男性からの依頼で、「女性として扱われたい」というジェンダー的な動機も大きい。

男性は基本的に性的立場において、能動的なスタンスにいることが多い。だからこそ、ラブドールに変身し、性的に“見られる”側となって興奮したいと語る人もいる。なかには、縛られてラブドールとなった状態でベランダに放置され、羞恥プレイのように扱われることで充実感を得る人もやってくる。

あめりさん(左)とマカロンさん(右)。どちらも性別は男性
あめりさん(左)とマカロンさん(右)。どちらも性別は男性

「体験者の目的はさまざまですが、人間ラブドール製造所は、一言で言うと『性的サービスのないイメクラ』みたいなものです(笑)。衣装やメイクなど外見だけでなく、ラブドールに変身したという設定も込みで楽しんでいる人が大半。

うちでは変身する前に、所有者はどんな人がいいかなど、設定を事細かに決めるんです。一例を挙げると、『中古品でボロボロのラブドールだったけど、やっと優しいオーナーと出会って報われる』みたいな感じです。シチュエーションに乗っかることで、より変身体験に没入できる。イメクラのように、女性スタッフが看護師のコスチュームを着用して、病室を模したシチュエーションでプレイするほうが興奮するみたいな感覚に近いですね(笑)。

真白さん。中古のラブドールという設定で、どこか哀愁漂う表情をしている
真白さん。中古のラブドールという設定で、どこか哀愁漂う表情をしている

ただ、男性のなかには、本当のイメクラと勘違いして問い合わせる人もいるんですよ。男性が『ラブドールに変身した私を犯してくれ』とか(苦笑)。そういうときは、あくまでもウチはフォトスタジオで、風営法に引っかかることはしませんよとお断りしてます」

他にも、夫婦やカップルで訪れる体験者も少なくない。夫から妻へのプレゼントとして、あるいは女性側がパートナーにセクシーな姿を見せたいという動機から、付き添いを希望するという。

「カップルで来る方は、ラブドールに変身することをプレイの一環として楽しんでいるケースが多いです。ラブドールに変身する過程で、私が奥さんを触ることで旦那さんが嫉妬したり、あるいは美しく加工された奥さんを旦那さんが愛でたりと、2人の関係性にエッセンスが出るのだと思います」