配信は新しいお笑いを発見できる場所

――勝手なイメージですが、中山さんはライブ配信とか配信者のことを嫌ってそうな印象がありました。

そうなんですよ。配信内容によって、タイトルに「非ユニーク」って付けるんですけど、これはこだわってますね。「今日はおもしろくない動画ですよ」と伝えてるんです。簡単に言うと「YouTuberのYouTubeですよ」と。YouTuberのこといつまでも言ってるのって、粗品(霜降り明星)と僕だけなんですけど。でもほかの動画はたぶんおもしろいです。
 

――配信を見てると、1時間くらいして「そろそろ終わりますね」と宣言した後に1時間、2時間続く時もありますね。

コメント欄で「せっかく今来たのに」とか言われると終わりにくいんですよ。

60歳になっても舞台に立てるようネタを磨く…R-1 2009王者・中山功太がネタと向き合う1年「R-1優勝して食えていないのって僕と三浦マイルドだけなんで…」_5

――サービス精神の高さに驚かされます。

まだウケたいだけじゃないですか。配信は笑い声0ですけど、たまに「お腹痛い」とか「コロナで入院してるのに、大声で笑って怒られた」ってコメントくれる人がいて、ほんまに声出して笑ってくれてんやって。

――4時間ぐらい一人で喋り続ける配信もありました。

4時間、ありますね。8時間やったこともあります。喋るのは好きなので。やっぱり、まだ考えたことがない日本語がいくらでもあるので、6時間やってそれが一回でも出れば意味があると思っています。
 

――お笑いを突き詰めていますね。

本来なら、僕はお笑いの好きさが沈んでいないとおかしいんですけどね。仕事が0で家賃を払えず、電気、ガス、水道全部止まった時もあって、公園で手や顔を洗ったこともありました。でもお笑いの好きさがひとつも下がらないんですよ。むしろ年々上がっていて。一番うれしいのが、見たことがないボケ方とかツッコミ方をできた時ですね。ライブ配信ってそれが発見できるので。そこは17ライブとかで、うっすら洋楽流してスパチャのお礼言ってるアホな配信者とはレベルが違います。
 

――お笑いの発見がモチベーションになっていると。

ものすごくなっています。最近は48℃のお風呂に入りながらの配信もあるんですけど、極限状態で喋っていると、たまに自分の能力を超えた発言をできることがあるんですね。それがめちゃくちゃうれしいんですよ。今は久保田(とろサーモン)のラジオにゲストで呼んでもらってますけど、あいつとはふだんも飲みに行くし、一緒に旅行にも行きます。何でかというと、あいつはとんでもない芸人なので。会話していると、自分が今までできなかったであろうレベルにいけることがたまにあるんです。だから彼は手放さないですね。

――最近の中山さんは配信以外でも活躍の場が広がってきていると感じます。

ありがたいですね。本当に今は好きなことをやれているので、あんまり不満はないです。正直に言うと、年齢とか考えて、今からテレビに出てどうなるというのは考えていないので。呼んでくれたらホイホイ行きますけど。
 

――もう「売れたい」という気持ちはないということですか?

もうないんじゃないですかね。僕が芸人になりたての頃はテレビがすべてでした。テレビっておもしろいものやし、とんでもないものだったんですけど、そうじゃなくなってきてる。テレビは変わらずおもしろいんですけど、見る側の選択肢が増えているので、全部の娯楽の中でテレビだけを目指す、とはならないですね。選択肢が増えている中で、自分を見てもらえるのがYouTubeや単独なので、そこの絶対数をじりじりと増やしていけたらな、というのはありますね。

取材・文/内田陽 撮影/佐賀章広