90年代に「ゴキゲン鳥」の歌詞で描いていた今の世界

――デビュー当時のキャパのライブハウスをまわるツアーの開催も驚きました。

やっぱりワクワクしてほしいんですよね。1995年と同じキャパシティの会場で、同じチケット代(3,090円)でツアーをやりたいっていう話をしたときも、最初はメンバーやスタッフも驚いていたけど、やっぱり「おもしろいね、やろうよ」と言ってくれて、実現できることになりました。

ファンの皆からすると「チケットがとれない」とか「体力的に無理だよ」とか、いろいろな意見もあると思うんですけど、今、デビューミニアルバムの『BOYS』をオマージュするからこそできることがあって。逆に、あの頃はできなかった思い切ったことも今はできる。もう、全員に好かれたいとも肯定してほしいとも思わないし、そういう意味では、突っ走れる強さがあるのは経験を重ねてきた今だからこそですね。
 

――チケット代が3,090円って、今ではあり得ないですよね。

SOPHIAってチケット代を長年値上げしないできたバンドだったんですけど、それも難しくなってきて。でも、値上げに関して言うと……ここ30年で物価が変わっていないのって先進国で日本だけで、それによって日本は、国際社会に対応できない国になっていて。新曲の話にも通じますけど、大人たちはもうそれでいいかもしれないけど、これから世界と向き合っていかなきゃいけない若者たちにそんな状況を残していいのかと考えると、僕らは態度を見直さなきゃいけないですよね。

富裕層と貧困層が二極化している今の状況も、僕があの頃、書いた歌詞と通じていて。それこそ今はまさに、「ゴキゲン鳥(~crawler is crazy~)」の歌詞の世界ですよね。

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――松岡さんが90年代に書いた歌詞はすごくソリッドで、今、聴いてもすごく刺さります。

本当ですか? 嬉しいです。今となっては、あの頃は伝えたかったことがあまり伝わってなかったんだろうなぁと思ったりします。

――当時、ヒリヒリしながら聴いてました。でもジャケ写とかアートワークはすごくポップでしたしね。
そうですね。僕のキャラクターとかメディアの出方も、(伝わりにくさに)影響してたのかなと思います。ただ、それでもやっぱりわかってくれる人たちがいて。今もこうして応援していただけているから、すごく嬉しいですね。

後編に続く

取材・文/川辺美希 撮影/水津惣一郎