早期解散となれば負けられない前哨戦となるが…
だが、こうした構図作りも宮沢氏のスキャンダルによって台無しとなってしまった。
ただでさえ裏金問題の逆風を抱えている自民に、宮沢氏の不祥事も有権者の投票行動に影響を与えれば、多くの無党派層の離反を招きかねない。自民党関係者からは「推薦を出して敗れるくらいなら、党本部としては推薦を見送ったほうがよいのではないか」との声もあがり始めている。
静岡県連は23日に自民党の茂木敏充幹事長に大村氏の推薦を上申したが、茂木幹事長は「党本部として大村氏を推薦するかは相談しながら考える」と述べるにとどめたといい、雲ゆきは怪しい状態だ。
党本部が静岡県知事選の対応に慎重なのは、ここで与野党対決に敗れれば、岸田首相の解散戦略に影響を及ぼしかねないからだ。
9月には自民党総裁選が予定されており、「岸田おろし」を警戒して岸田首相が早期解散に踏み切るという観測も根強いが、現在、苦戦が伝えられている4月28日投開票の衆院3補選・島根1区に続いて、静岡県知事選でも負けを重ねれば、一気に岸田文雄首相の求心力は低下しかねない。
一方で現在行われている東京15区補選でも、小池百合子都知事が擁立した乙武洋匡候補の推薦を、自民党が急きょ見送ったことは記憶に新しい。
解散や総裁選に向けた自民党内のさまざまな思惑、そこに鈴木修氏の影響力をめぐる政財界の動きや、静岡市と浜松市の対立などが重なり、知事選に向けた情勢は非常に混沌としている。
地域の課題、国政の課題について静岡県民はどんな判断を下すのか。静岡県知事選は1ヶ月後の5月26日に迫っている。
取材・文/宮原健太