テスラはなぜバッテリーの製造を内製化したのか

テスラは2010年にパナソニックと資本提携した。パナソニックが1.5%の株式を24億円で取得。バッテリーの共同開発を行なってきた。

しかし、2015年ごろから中国や韓国からの調達を示唆。2019年に突如として中国のCATLからの調達を開始している。2021年にはパナソニックが持株を4000億円で売却した。資本提携は解消されたのだ。

 このとき、テスラは中国が魅力的なマーケットであると感じていたはずだ。2017年の時点で中国のEVとPHEVの販売台数はアメリカの3倍以上に膨らんでいたからだ。更に2015年の時点でパナソニックはリチウムイオンバッテリーのシェア1位の座をCATLに奪われていた。

テスラ過給機ステーションで充電中のテスラカー
テスラ過給機ステーションで充電中のテスラカー

テスラが調達先を分散し、中国での量産体制確立を目論んでいたのは明らかだ。しかし、それが誤算を生むことになった。

中国は2019年に「NEV規制」を導入した。EVやPHEVの普及を目的に、国内外の自動車メーカーに対して数値目標を設定したのだ。テスラにとっては正に追い風で、2019年に上海で初のギガファクトリーを稼働させた。

しかし、中国国内のメーカーが次々と安価な電気自動車を発売してしまう。当時、1台当たり50万円を下回るモデルもあった。テスラにとって魅力的なマーケットである中国で、価格破壊という悪夢が現実のものとなったのだ。

BYDはもともとバッテリーメーカーで、CATLに次ぐシェアを獲得するに至った会社だ。EVは製造原価のおよそ4割をバッテリーが占めている。ガソリン車のエンジンに等しい存在だ。

バッテリーから製造できるBYDと、それを調達する以外の手立てがないテスラでは埋められない価格差が生じるのは当然である。

そこで、テスラは2020年ごろからバッテリー内製化の動きを加速したのだ。