アメリカの税制優遇制度からも外れるという不運に

バッテリー開発に乗り出したとはいえ、そんなにスムーズに進むはずもない。サイバートラックに搭載を計画していた「4680」の開発に難航。最終的には、バッテリーに必要な部品の一部をBYDに供給するよう求めたという。BYDが利益率を高められるバッテリーの完成品を収めたがるのは当然だ。結局のところ、BYDからテスラへの部品の供給はかなわなかった。

しかし、やはり自前での開発はしきれず、部品の一部は中国から調達を続けていた。これが仇となる。

バイデン政権は、テスラに対して2024年1月から中国製のバッテリー部材を使っているとし、アメリカ政府の補助金支援リストから外れている。サイバートラックは、アメリカの電気自動車購入における110万円程度の税制優遇が受けられるはずだったが、それも立ち消えとなったのだ

テスラは販売台数やシェアをいたずらに追いかけるのではなく、購入する層の再設定やアフターサービスの充実、生産体制の見直しなど、ビジネスモデルの再転換が必要なように見える。

取材・文/不破聡 写真/Shutterstock