「問題行動のある子」はバラけるようにします
同じく「やり直しは信じられない」と話すのは名古屋市内で公立中学の教師をしていたBさん(38)だ。
「私の学校ではまず主任や生徒指導の先生などがエクセルで、学力の高い生徒から低い生徒までが重ならないように分配します。その後、その学年を受け持った先生たちが集合し、プロジェクターにエクセルを映しながら、ピアノができる子がクラスごとに別れているかを確認したり、生徒会に入るようなリーダー格の子や運動能力の高い子が固まりすぎないようにバラけさせます。
そういった調整を進め、最後に問題行動のある子もバラけるようにします。このような話し合いを1回につき1~2時間、約1週間にわたって進め、最終的に教頭や校長にOKをもらって“確定”となります。
一旦こうして決めたクラス替えを「やり直す」という事例は、私立校などではあるかもしれませんが、公立ではまず考えられないと思います」
Aさん、Bさん両教諭の話で共通するのは、新学年の担任予定者が新クラスの編成作業に関与する度合いはほとんどなく、そのため「はないちもんめ」のように好き嫌いで子どもを取り合うような事態にはならないということだ。
学力順に分類するのが最優先で、次に体力やリーダーシップ、特殊技能(ピアノ演奏)、問題行動なども順次考慮して「均等分け」する方式で、クラス編成は決まっていくという。各学校ともクラス替えが決まると教諭陣の人事が決まり、多少の異動を経て新学年の担任が決まる、という流れが通常だという。
関東で 長年、公立中学校の教師を務めてきたベテラン教師のCさん(50代・女性)からはこんなため息が聞こえてきた
「今後、こうしたクラス替えの事例が増えていく可能性はあるのかなと思います。そういう意味ではすごく現代チックなニュースだなと思って見ていました。教育現場はこの10年くらいの間で、生徒や保護者の力がどんどん強くなり、教師側はとにかくトラブルを起こさないように気を遣っているんです。
それこそひと昔前までは、親が子に『とにかく学校に行って先生の言うこと聞いてなさい!』という時代で、クラス替えもそこまで先生たちで議論することはなかった。でも今は、学力別に振り分けてから何度も会議を重ねて、ようやくひとつのクラスが完成します。
そこまで時間がかかる理由としては、今回の守山市のニュースにもあるように、生徒や先生との人間関係が大きい。毎年3学期になると、生徒や保護者が学年主任に『〇〇先生とは相性が悪いので来年度は絶対に同じにしないでください』『〇〇さん(生徒)と一緒にいて嫌な思いをしたから、別のクラスにしてほしい』と要求してくるケースが圧倒的に増えました」
さらにCさんが続ける。
「もちろん本当にいざこざが起きていたり、正当な理由があればそれを考慮するのもこちらの仕事なのですが、理由があいまいなケースも少なくない。とはいえ、要望通りにしないと、最近の中学生はなにをするか本当にわからないんです。
『学校生活でストレスが溜まった』と変なクスリをたくさん飲んだり、リストカットだってしかねない。学校側としてはとにかく騒ぎを起こされないよう、言うことを聞くしかないんです。
それこそ今の教頭は呪文のように『なにかあったら困るから』と唱えるし、『昔はこんなんじゃなかったのに...』と愚痴をこぼす同僚もいますよ。教育現場のパワーバランスが変わり、今後そうした事例も増えていくんじゃないかなと思いましたね」