ゲームアプリを80代で開発
高齢者がプログラムの勉強をすることもできます。そんな難しいことはできないと言う人が多いかもしれませんが、始めると、病みつきになってしまうかもしれません。
プログラムの知識が全くないまま、iPhoneのアプリを作った高齢者もいます。
若宮正子さんは、1935年生まれ。高校卒業後、大手都市銀行に就職。定年時の役職は子会社の副部長。60歳からパソコンを使い始め、スマートフォン向けのひな人形位置当てゲームアプリ「hinadan」を80代で開発しました(日本経済新聞、2018年11月22日)。
2017年6月、米アップルが開催する世界開発者会議「WWDC2017」で世界最高齢の女性開発者として特別招待され、世界を驚かせました。
ネットを介して多くの人と交流。パソコンやネットを活用したシニアの生きがい作りや、子供向け教育を支援する複数の団体に参画。
「プログラミングは勉強というより、興味があることに挑戦しただけ」、「大人の勉強は道楽。やりたいことをやればいい。ものにならなくても、プラスになりますよ」と言っています。
楽しみながら学んだことは、ものにならなくてもマイナスにはなりません。時間が惜しいので、テレビで見るのはニュースと天気予報くらいだそうです。
「デジタルスキルで、高齢者はもっと人生を楽しめる」
60歳のとき、ネット上で活動していたシニアのグループに参加したくてパソコンを購入。キーボードの使い方も分からなかったが、毎週末、パソコンショップに通って、店員に教えてもらいながら使い方を習得。お目当てのグループに参加してからは、ネット上の知人からホームページの作り方や、旅行記の公開方法などを学んだそうです。
同世代の知人に頼まれてパソコン教室を自宅で開催したり、マイクロソフト主催の東北復興支援イベントに参加。このときに知り合った東北のIT企業社長の勧めで、シニアが楽しめるiPhoneアプリの開発を決意。教科書を買い込み、教科書の著者にメールで教えを請いつつ、背中を押したIT企業社長からもネット経由で指導を受けながら、半年でアプリを完成しました。
このアプリが評価され、前述の「WWDC2017」に出席することになったのです。2017年6月にアップルの招待を受け、同社が米サンノゼで開催している開発者イベント「WWDC」に赴きました。
その基調講演で、若宮さんは「最年長のゲームアプリ開発者」として紹介されました。その前日には、ティム・クックCEOと面会したことが話題になりました。
そして、2018年2月2日には、国連総会の基調講演に立つことになりました。デジタルスキルを備えれば、高齢者が「もっと人生を楽しめる」と呼びかけ、会場は拍手で沸いたそうです(日本経済新聞、2018年2月3日)
文/野口悠紀雄 写真/shutterstock