デジタルで社会的なつながりを維持できる

それまでの会社勤めの生活を終えて退職後の生活に入ると、人々に接触する機会が大きく減ることになります。それまでは、会社の人々、そして取引先の人々などと多くの接点を持って仕事をしていたのに、退職後はその世界が一挙に縮まって、自分の家族だけとしか会わないといったことになります。

シニアにとっての大きな問題は、このように人と人との相互接触の機会が大きく減少することです。このために、多くの人が、退職後の生活が意味のない生活になると感じます。
 

そこで、学校時代の友人たちとゴルフに行く、将棋の会をするといったことが行われます。これらは確かに人と人とのつながりを維持するために役立つことだと思いますが、それよりもっと積極的に、一つ一つの接触を広げていくことが必要です。

このための技術と環境が、コロナによって大きく変わりました。それはZoomなどのオンライン会議が急速に普及し、多くの人々がこれを日常的に使うようになったことです。この仕組みは無料で40分程度の会合ができます。10人程度までであれば、お互いに会話ができます。

『「超」整理法』シリーズで知られる野口悠紀雄が、シニアになったら文章は「音声入力」で書くことを薦める理由_1
すべての画像を見る

「Zoomでは実際に会っているような会話はできない」と批判する人がいます。確かにそういった面はあるのですが、実際の集まりだと、隣の人とはよく話すけれど、遠くにいる人と話せないという問題があります。

それに、オンラインだと、わざわざ移動する必要もない。これまでもこのような技術は利用可能だったのですが、人々がそれを受け入れないという問題がありました。「実際に会えばいいのに、なぜオンラインで会合を開かなければならないのか?」という反応が多かったのです。これが、コロナによって移動や接触が制限されるようになって、大きく変わりました。

Zoomなどの方法は、最初に在宅勤務で使われ、その他の会合にも使われることが多くなりました。そして人々は、この新しい方法による会合に、大きな意味があると気づくようになったのです。

私の場合も、いま仕事上のほとんどの打ち合わせは、直接に会うのではなく、オンライン会議で行っています。それだけではなく、友人たちとの集まりもオンラインに移行しました。
 

PCもスマートフォンも使えないという友人は、確かにいます。そうした友人の場合、電話をかけて話すことも考えられますが、相手の都合を考えずにやたらに電話することはできません。また、格別の用件がない限り、長い手紙を書く気にもなれません。こういう人たちは、悪くすれば家族との連絡だけしかできないことになり、孤立してしまいます。

またメールの場合には文字を入力する必要がありますが、Zoomであれば会話なので、文字の入力は必要ありません。テレビ電話でも相手を見ながらの会話はできますが、通話料金がかかります。しかし、Zoomではインターネットに接続している限り、格別の料金は必要ありません。

Zoomの場合には、電話と違って遠いところに住んでいる家族との会話にも便利です。ChatGPTと並んで、高齢者には極めて重要な手段です。