26日の平壌での対戦は日本人サポーターは「皆無」だが…

一方、1990年代まで活発な外交が行なわれた日朝の関係は、北朝鮮による日本人拉致や核開発を機に2000年代からは対立が激化したが、サッカーの応援風景は逆の方向に大きく変わったという。在日朝鮮人の男性が振り返る。

「私も2月の女子の試合を国立競技場で観ましたが、昔と大きく変わったのは国歌への態度です。私たちの(北朝鮮の)国歌が流れたときに日本のサポーターが敬意をもって立って清聴したのに続き、君が代が斉唱されたときは、私も周囲の同胞も同じように立って耳を傾けました。

1989年の試合では君が代がかかると『座ろうぜ』との声がかかって、実際に座ったりもしましたし、試合に負けると周辺で(同世代の日本人との間で)普通に喧嘩まで起きていたものです(苦笑)。そうしたことはもうなくなりました」

2月に行なわれた女子の日朝戦、サポーターも互いに選手の健闘を称えていた(関係者提供)
2月に行なわれた女子の日朝戦、サポーターも互いに選手の健闘を称えていた(関係者提供)

この男性は「女子の試合は(北朝鮮が)負けましたが、いい試合で見ていて楽しかったです。勝っても負けても応援できることがうれしいです」と、応援に行くこと自体が楽しみだと話す。

他方、26日の平壌での対戦は、日本サポーターは「皆無」と言っていいほどの完全アウェーになる。試合が生中継される見通しがなく、日本のサポーターからはリアルタイムで見られない状況を懸念する声が出ている。

これに絡んで日本外務省は平壌での試合に先立ち、北朝鮮担当者を訪朝させると伝えられている。日本外交官の訪朝は、少なくとも2020年1月末にコロナを理由に北朝鮮が出入国を厳格に統制しはじめて以降は初めてだ。

「北朝鮮は昨年5月に外務次官が『日本が関係改善を模索するなら朝日両国が会えないことはない』と表明しました。今年1月の能登半島地震に際しては金正恩氏が岸田文雄首相に宛て見舞いを伝え、2月にも妹の金与正党副部長が、日本の態度変更を前提にしながら『首相が平壌を訪問する日もあり得る』との談話を発表しました。

日本との対話を模索するこの流れは維持しているもようで、平壌で日朝の当局者は当然、サッカー以外のことでも意見を交わすでしょう」(日朝筋)