ウクライナ避難民とのダブルスタンダード
いま日本には300人ほどのロヒンギャがいるが、そのうち270人ほどが館林で暮らす。
「仕事は工場での労働が8割くらいで、あとは中古車や食材販売などのビジネスかな」
安定した生活をしているかのようにも見えるが、実はそのほとんどが「難民」として認められてはいない。難民としての申請は日本政府に却下されている。そのため自分たちや家族が味わってきた苦しみや差別を、否定されたように感じるロヒンギャは多い。
難民認定の代わりに彼らは「定住者」や「特定活動」といった在留資格を得た。だが就労をはじめさまざまな権利が認められてはいるものの、決して「難民」ではないのだ。国からの支援もない。日本は難民受け入れのための国際的な枠組みである難民条約に加盟しているにもかかわらず、基本的に難民を認めない国でもある。2021年の場合、日本に逃れ難民申請をした2413人のうち、認められたのはわずか74人だ。ウラさんもアウンティンさんも「定住者」となったが、
「本当は難民として認められたい」
とつぶやく。
さらに日本で暮らすロヒンギャの中には、「定住者」などの在留資格すら取得できず、「仮放免」という立場で暮らす人もいる。これは『出入国在留管理庁』によれば「難民申請を受けて審議する間、本来ならば結果が出るまでは入国管理局の施設に収容する必要があるが、人道的な見地から身柄は拘束せずに、〝仮〟に〝放免〟する」というものだ。
「仮」の滞在者なのだから日本に住民登録はできず、社会保険もないし就労も許可されない。生きていくすべがない。だから仲間たちで助け合ってはいるが、そんな状態で何年も「仮」のまま館林で生き、故郷へも帰れないという。
一方でウクライナからは「難民ではなく避難民」という名目で次々と受け入れを続け、就労や日本語学習のサポートなど手厚い支援がきわめて迅速に決められた。徒手空拳で苦労しながら館林で生き延びてきたウラさんやアウンティンさんは、
「ダブルスタンダードではないかと思います。私たちロヒンギャも同じ難民、同じ人間」
と悲しそうに話す。