甘い球を「一発で仕留める技術」の差

ふたつめは、打席での投手に対する際の意識だ。例えばスタンス。村上を見ていると、対右投手相手ならややクローズドタンス、左投手ならややオープンスタンスと、相手投手の左右によってわずかだがスタンスを変えている。

これなら外角に投じてくるストライクも、しっかり腰を入れてセンターからレフト方向に弾き返せるし、内角球も差し込まれることなく引っ張れる。いわば工夫だ。

その点、清宮にはそうした工夫が見られない。右投手でも左投手でも、同じように立っている。無論、それが悪いわけではないが、パワーに頼るだけのスイングだから、ホームランが出る確率もぐんと下がってしまうのだ。

また、清宮はミスショットも目につく。これが3つ目のポイントでコンタクトの精度、いわゆる「一発で仕留める技術」の違いだ。

例えば甘いボールが来た時、村上は待っていたかのように素早い身体の回転で叩くが、これができるのは、それだけバットコントロールに秀でているということ。対照的に清宮は「貰った!」とスイングし、打ち損じてファールになり首をひねる、といったシーンをよく見る。

この違いが顕著に表れるのが、試合前のトスバッティングだ。コーチなどがボールをトスして打者がネットに打つ練習をご覧になったことがあるだろうか。軽くコツン、コツンと打っているだけに見えるが、本来、苦手なコース、高さを矯正するのに役立つ練習なのだ。

あれは93年。私がヤクルトにいた際、西武との日本シリーズで、清原和博が丁寧なトスバッティングをしていたのを見たことがあった。高め、低め、外角、内角と、実に丁寧に打ち分けていた。横で一緒に見ていた野村克哉監督が

「日本シリーズのような特別な試合前でも、清原クラスは日々やる地味な練習をしっかりやっているんだな」

と感心していたのが印象的だった。それ以降、ヤクルトでもトスバッティングをただの準備運動ではなく、練習として徹底的にやらせるようにしたのだが、昨今は準備運動程度のつもりでやっている選手がなんと多いことか。